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『かのんのノクターン』

エピソード2

実際、かのんは、

自分がピアノを愛しているのかどうか、よくわからなかった。

世の大人たちが毎日働き続けなければならないように、

かのんもまた、毎日ピアノを弾き続けなければならなかった。

愛しているかどうかなんて、あまりどうでも良いことなのだ。

使命感のようなものだと言える。


学校の合唱コンクールでは、決まりきったようにピアノ役に任命される。

すると、かのんの練習時間は7時間に増える。

母親は、合唱曲の練習をあまり喜ばないが、

学校にも色々と折り合いというものがある。担わなければならないものがある。

最優秀伴奏者賞でも獲れば報われるものもあるが、

合唱コンクールの賞というのは、単純な技術の比較ではない。

クラスメイトたちの決めた合唱曲が、難易度の低い単純な曲であれば、

その時点でもう、受賞の可能性はほとんど消えうせる。


そんなかのんも、一度だけピアノ伴奏で賞を獲ったことがある。

中学1年生の時のことだった。

かのんのクラスは「心の瞳」という唱歌を歌った。あまり難しい曲ではない。

かのんは賞を狙っていたりはしなかった。もともと野心家ではない。

かのんはコンクールの本番中、

自分やクラスメイトたちの歌う「心の瞳」に、強烈に感動してしまった。

そして、思いがけず、弾きながら涙を流してしまったのだ。

手で拭わなければならないほど、ポロポロ、ポロポロと。

手を離せば演奏は乱れるが、それは仕方のないことだった。

演奏が乱れれば、会場の誰もがかのんの涙に気付く。

涙のせいで、演奏としてはボロボロの出来だったのだが、

涙のために会場の感動を誘い、かのんは最優秀伴奏者賞を受賞することになる。


『かのんのノクターン』

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