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『大家族』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年4月3日
  • 読了時間: 2分

エピソード2

ミユの母親は、およそミユの母親っぽいと言える。

可愛らしい顔、おっとりした性格、キャシャな体型…

どちらかと言えば、ではなく、どう考えても、

ミユは母親の血を強く継いでいる。


その母…マユはと言えば、

やはり、私立のお嬢様学校に通っていた。

そのまま過保護に育てられ、

牛丼屋など一度も入ることなく、大人になった。


しかし、マユには他のお嬢様とは異なる点が、1つだけあった。

生まれ故郷が田舎だったのだ。

マユは、合掌集落で有名な白川郷で生まれた。日本家屋の立ち並ぶ、素朴な村だ。

白川郷の大きな民宿に生れ落ちたマユは、

いったい誰が親であるかもわからないくらい大勢の人間に囲まれながら、

にぎやかな幼少時代を過ごした。


しかし、両親が離婚をしたのだ。

民宿は父方の所有物であったため、マユは母親と引っ越すことになった。

そして11歳からは、東京の国立に住むことになる。


父親はいなかったが、お金には困らなかった。

離婚の原因は父の不倫であり、

慰謝料養育費が毎月、マユの母に振り込まれたのだ。

マユの母はあまり働く必要性がなく、

空いた時間を、創価学会の集会場で過ごした。

国立の駅前には、大きな集会場があるのだ。

必然的に、マユもその集会場によく連れていかれた。

そして、宗教的な人や話に触れながら、大きくなっていったのだ。


マユ自身は、宗教にはあまり興味がなく、教義もよく理解していなかった。

マユにとって創価の集まりは、クラブ活動のようなものだった。

とにかく、「奉仕することは素晴らしい」という理念だけは理解できたし、

母の手伝いが楽しかったので、その理念を納得もしていた。

そうして、奉仕的な人々に囲まれながら、マユは大人になる。


『大家族』

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