『沖縄クロスロード』 『沖縄クロスロード』
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- 2023年3月13日
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エピソード14
停留所から逆方面のバスに乗り、3駅くらい戻った。
村役場の前でバスを降り、古ぼけた役場の戸を開く。
…!
よく考えてみたら、役場に「道案内課」なんてモノは無い。
どこの窓口で訪ねればいいんだろう?
まごまごしていると、
書類を持って通りかかった建設課のおじさんが、ユカたちに気を留めてくれた。
「結び宿?知らんなぁ。それほんとに今帰仁にあるんか?」
「え!」役場の人にそんなことを言われると、不安にもなってくる。
5時間も掛けて今帰仁まで来たのに、
「カンチガイでした」ではミジメ過ぎる…
建設課のおじさんは、親切に観光パンフレットを探してきてくれたけど、
そこにも「結び宿」の名は書かれていなかった。
次は電話帳を開いてくれたけど、やはり「結び宿」の文字は無かった…。
そうしてまごまごしていると、
見知らぬお姉さんが声を掛けてきた。
「何かお困りですか?内地の人でしょ?」
グレーのスーツが似合う、学校の先生みたいな利発そうな女性だった。
「宿を探してるんです。結び宿っていうところ。」
ユカは、わらばん紙みたいにのっぺりと言った。
もう疲れてきた。あまり愛想良くはしゃべれない。
「あぁ!隠れ家みたいなお宿でしょう?」
「それです!タブンそれ!」
急に元気になった。人間って単純だ。
「仲尾次の人くらいしか知らないと思いますよ(笑)」
「え!沖縄では割りと有名な宿だって聞きましたよ?」
「旅行者には有名でも、島んちゅは宿なんて興味がないから(笑)
とにかく、連れてってあげますよ。
ちょっと狭苦しいけど、大丈夫ですか?」
役所の外に、お姉さんの車があった。
お姉さんのお父さんが、運転席にいた。
ユカたちは、後部座席に3人ぎゅうぎゅうに座った。
お姉さんは、「結び宿まで連れてってあげて」と、小さな声でお父さんに告げた。
お父さんはウンともスンとも言わずに、でもすぐに車を発進させた。
車は300メートルほど走って、すぐに停まった。小学校の前だった。
お姉さんは、そこで降りてしまった。本当に先生だったのかも。
「あとはよろしくね。」とお父さんに小声で告げ、
「では、良い旅を。」とユカたちに微笑んだ。
車はさらに、バス通りを直進すると、
やがて、小道にそれた。道は畑がちになった。田舎の風景だ。
車は、ごてごてした農道をのろのろ走る。
そろそろ暗くなってきたから急いでもらいたいのだけど、
お父さんはいたってマイペース…
そして、コーラの真っ赤な自販機の前で、お父さんは停まった。
「この辺なのかな?」ユカたちは車から降りる。
「お父さん。宿はどこですか?」ユカは尋ねる。
衝撃的な答えが返ってきた!
『沖縄クロスロード』