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エピソード10 『アオミ姫』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月31日
  • 読了時間: 3分

エピソード10

一行は、小屋の中に入れさせてもらいました。

ビックリです!

小屋は、想像以上に、キレイに掃除が行き届いていたのですから!



建物(たてもの)が古いため、窓ガラスは割れ、カベが腐(くさ)ったりしていましたが、

部屋の中は、可能な限り、キレイに整とんされていました。


ウッドテーブルに腰掛け、キョロキョロしながら待っていると、

やがて、さっきの彼が、きちんと服を着て、現れました。

服装も、わりと清潔(せいけつ)そうでした。

少なくとも、臭(にお)ったりは、しませんでした。



姫は、臆(おく)せず、彼に話しかけました。

「…あなた、浮浪者(ふろうしゃ)じゃ無かったの?」


「浮浪者!?

 えーっと、ボクみたいの、浮浪者って呼ぶかもしれないなぁ。」


「えー!?

 じゃぁやっぱり、私たちをダマしたり、するワケ!?」


「あはははは!

 ボクは、人をダマしたりは、しいないよぉ♪」


「だってあなた、浮浪者なんでしょ!?」


「浮浪者って、『家無し』のことでしょ?

 『家無し』だからって、犯罪者とは、限らないよー?」


「そ、そ、そ、そうなの!?」


「少なくとも、ボクは、犯罪者では無いはずだけどなぁ。

 悪いことしないし、他人を利用したりも、しないし…」



彼は実際、悪い人では無さそうだったので、

一行は、ホっと安心しました。

彼は、熱いお茶を出してくれました。

名前を、トコッシーと名乗りました。



「それであなた、

 どうして、こんな小屋で暮らしているの?」


「どうしてって…

 オレンジの町には、ボクの住むところが、無かったからさ?」


「町には、家も宿も無数にあるのに?」

フラミースが、口をはさみました。


「ボクは、ヨソ者だからねぇ。

 もっと遠い町から、旅してきたんだよ。

 ギターを持って、お金は持たずに、さ。


 ボクが住んでた町や、他の途中の町では、

 ボクがギターで唄っていると、

 みんなが、食べ物や寝床(ねどこ)を提供(ていきょう)してくれるんだ。

 物々交換(ぶつぶつこうかん)っていうやつさ。

 いや、交換すらしなくても、差し出してくれてたなぁ。


 でも、おどろいたことにさ!

 オレンジの町は、そうじゃなかったんだ!!


 ボクが唄ってると、

 みんな、拍手かっさいで喜んでくれるというのに、

 『何か、食べ物ある?』って聞いたら、

 『カネを払え!』って言うんだよ!」


「…それって、当たり前なんじゃなくて?」

姫は、フシギそうにたずねました。

「それって、当たり前なの?

 オレンジの町では、それが当たり前なの?

 歌は、食べ物よりも価値が低いの?」


「うーんと、そうかも…」


「そんなのって、オカシイよねぇ?

 パンを作る人も、歌を唄う人も、みんな、立派だよ。

 どっちも同じだけ、立派だよ。

 パンを作る人だけが、お金や家を持てて、

 歌を唄う人は、お金や家を持てないなんて、不平等だよねぇ?」


「えぇ…まぁ…たしかに…。」


「オレンジの町のヒトは、みーんなケチで、

 食べるものも住む場所もシェアしてくれなかったから、

 僕は、この家を見つけて、泊まっているのさ。」


「…つまり、

 浮浪者であるトコッシーよりも、

 町の人たちのほうが、ならず者ってことだ…!!」

フラミースは、目からウロコが落ちました。



結局、アオミ姫とフラミースは、

トコッシーの小屋に、一晩泊めてもらいました。

アオミ姫もフラミースも、

お金も払っていなければ、

歌も贈っていませんし、パンも差し出していません。

それでも、トコッシーは、

イヤな顔1つせず、2人を泊めてくれたのです。


『アオミ姫』

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