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エピソード10 『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』

エピソード10


パパは、悩んだわ。

「オレのやっていることは、正しいのか?間違っているのか?」ってね。

パパは、カフェテリアに行って相談しようと思ったけど、

この島には「天使の待ちぼうけ」は無いわ。そこだけは、ヴェネチカと違うのよ。

だからパパは、「天使の待ちぼうけ」のマスターに、手紙を書いたわ。

「オレのやっていることは、正しいのか?間違っているのか?」ってね。

マスターからの返事は、すぐに来たわ。


 よう友達。

 オマエはつくづく、大変な目に遭うな。

 「オレのやっていることは、正しいのか?間違っているのか?」だって?

 人生に、正しいも間違いも無いんだよ。

 人生には、正しいも間違いも無いんだ。

 そのことに気づかなくちゃ、良い大人にはなれない。

 「イカダ造らなくちゃ」と思ったんだろ?なら、そうするしかないさ。

 「青く塗らなくちゃ」と思ったんだろ?なら、そうするしかないさ。

 人間はそれぞれ、やらなくちゃならんことがある。

 他人に褒められようが、他人に恨まれようが、な。

 オマエはどうも、観光客に好かれちまうんだよ。そういう感性を持ってる。

 なら、その宿命から逃げずに、生きれば良いんじゃねぇか?」



マスターからの手紙を読んだパパは、また船造りを始めたわ。

今度は帆船じゃないのよ。海賊船みたいな、屋根付きのやつ。

今度は人魚の国にでも引っ越すつもりかしら?

そうじゃないみたい。パパ、今度は、カフェテリアをやることにしたのよ。

船のカタチのカフェテリア。ステキでしょ?

「人魚の国にでも引っ越すのかと思ったわ」って言ったら、

「それ、いいね!」ってパパ。

ホントに引っ越すことにするかと思ったら、そうじゃないのよ。

カフェテリアの名前なの。「マーメイドの国へ」って、そういう名前なの。

それを浜辺に浮かべたら、案の定、大繁盛したわ。


セントニール島以上の楽園って言ったら、

あとはもう、人魚の国くらいしか残ってないわ。

セントニールに来た観光客たちは、

もっとステキな楽園に焦がれて、「マーメイドの国へ」のドアをくぐるの。

みんな夢見心地になるのよ。

そんな名前の海賊船の木戸をくぐったなら、

ホントに人魚の国に行けそうな気がしてくるの。


さらなる楽園に憧れる観光客たちと、ゆっくり会話するヒマも無いわ。パパには。

だって、観光客向けのカフェテリアは忙しいのよ。みんなソファに座ってるし。

お客さんの相談に乗る代わりに、パパ、

紙切れを、カベのメニュー表の下に張ったわ。


 人生には、正しいも間違いも無いんだ。


「天使の待ちぼうけ」のマスターにもらったお手紙を、ちぎって貼ったの。

すると、今まで人魚のこと想像して夢見心地だった観光客たちが、

ふっと真剣な顔になるのよ。

人生には、正しいも間違いも無いんだ。

そのフレーズを見て、しばし哲学にふけるの。

観光客なんていうのは、哲学しないのよ?普段はね。

今まで一度も哲学しなかった人たちが、哲学していくの。このカフェテリアの中では。


観光客が、なぜ観光旅行をするか、わかる?

人生にくたびれているからよ。リフレッシュしたいのね。

じゃぁなぜ、くたびれるような人生を送ってるの?

それが正しいと思っているからよ。そう思いこまされてきたから。

そんな人たちが、この船のカフェテリアで、

「オレの人生は正しいのか?」って考えるの。

すると、どうなるとおもう?

その人は、家に帰ったら、

取り憑かれたように、小さなイカダとか造りだすの。または屋根を青く塗るのよ。

そうじゃないにしても、そういうようなことをするの。くだらないことを。

でも、そのくだらないことが、思いがけない展開を生むのよ。

世の中っていうのは、そういうふうに進化してきたの。変化してきたの。

几帳面にお役所仕事してる人が、進化させてきたわけじゃないの。

道から反れて、イカダ造りとかはじめちゃった人が、改革してきたの。

そういう人がいないと、世界っていうのは進化していかないのよ。

いつまでも、動物みたいに狩り暮らし続けるだけになっちゃう。



『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』

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