エピソード10
半年ほど掛けて、
私たちは、ログハウスを完成させました。
非常に迷ったのですが、
私たちは、そこに引っ越すことにしました。
商業施設にするのでも、別荘にするのでもなく、
メインの住居に据えることに、したのです。
とは言え、
このログハウスの間取りは、2LDKでした。
家族6人が暮らすには、厳しいように感じました。
家族一同、困惑し、悩みました…
1週間後、
娘たちは、面白い提案を持ってきました!
長女・和佳子は、
「友達とルームシェアをするから、私は部屋もベッドも要らない」
と言い出しました。
「その代わり、しょっちゅう遊びに行く」と。
「遊びに来た際の寝床は、どうするんだ?」と尋ねると、
「お父さんの寝袋を貸してくれれば、リビングに雑魚寝で良い」
と言うのです!
次女・京子は、
「大学を辞める」と言い出しました。
「学費の心配をしているのか?」と尋ねると、
「あ、そういうメリットもあったんだー!」
と、呑気なことを言っています…(笑)
つまり、生活費を配慮してでの気遣いでは、無かったようです。
「大学に意義を感じていないから、辞めたい」
とのことなのです。
「辞めて、何をするんだ?」と尋ねると、
「沖縄に飛んで、住み込みで、リゾート・バイトをする」
と言うのです。
確かに、住み込みバイトであれば、
ほとんど初期費用を伴わずに引越しが可能だし、
寮費や食費が、「込み」であっても「別」であっても、
多少の貯金は、毎月積み重ねられます。
「せっかく建てたログハウスが、楽しめないぞ?いいのか?」
と尋ねると、
「ログハウスの宿で住み込みバイトをするから、
お父さんたちより立派なログハウスが、エンジョイ出来る!」
と、勝ち誇っているのです…(笑)
長女・和佳子・次女・京子両方に、
「その後はどうするんだ?帰る家が無いんだぞ?」と念を押してみると、
「それは、未来になってから考える。
ぜいたくを言わなければ、滞在出来る場所は、幾らでもある。」
と、口を揃えるのでした。
どうやら、
彼女たちの楽観志向の源には、
「お父さんだって、大学生の頃、
寝袋1つで、どうにでも暮らせてたんでしょう?」
という教訓が、あるようでした。
それは尤もですが、彼女たちは女の子です…。
しかし、
説得して考えを変える子たちではなく、
たいていの困難は、
知恵と努力と愛嬌で切り抜けてしまう子たちなので、
私は、2人の意志を尊重させました。
妻・翔子も、文句は言いませんでした。
「女の子だって、野宿ぐらい、出来るわよ♪」
と、あっけらんとしていました。
…やはり、
家族というのは、似るものなのでしょうか…?
長女・和佳子と次女・京子は、
「1つだけ、お父さんに謝りたいことがある!!」
と、神妙な面持ちで言ってきました。
「ネクタイ選び、出来なくなっちゃって、ゴメンねぇ!」
『リストラ後の7回裏で…』