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エピソード11 『アオミ姫』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月31日
  • 読了時間: 2分

エピソード11

翌朝は、

さわやかな目覚めでした。


姫は普段(ふだん)、

母親の「起きなさい!アオミ姫!起きなさいったら!」

という、下品な大声で、起こされます。

だから、朝からもう、キブンはサイアク…


でも、この日は、

差し込む木(こ)もれ日と鳥たちのささやきで、

ロマンチックな目覚めを、むかえられたのでした♪



「ねぇ、トコッシー?

 私のドレス、汗でグチャグチャなんだけど、着替えのドレスは、ある?」


「えー?

 ドレスなんて僕、一着も持ってないよ?」


「はー!?

 じゃぁ私、どうすればいいのよ!?」


「オイオイ!姫さん?

 アンタ、ドレスは要らんから、姫稼業を辞(や)めたんやろ?

 自分が昨日言ったこと、忘れたんか?」

ホトミが、ヒソヒトと姫に答えました。


「…あ、そうだった!」


「白い肌着ならあるけど、

 それを中に着るかい?少しはマシになると思うけど。」


「そうね。じゃぁ、それをお借りするわ。」

アオミ姫は、肌着だけ、着替えることにしました。



「それと、

 お腹が減ったから、フレンチトーストでも、いただけるかしら?」


「フレンチトーストなんていうのは、ここには無いなぁ。

 それに、姫さんヒマ人なんだから、

 ご飯くらい、自分で用意したら?」


「はー?私は姫なのよ!?」


「でも、姫稼業がイヤで、抜け出してきたんでしょ?

 それじゃ、もう、お姫様とは、言えないよ。

 フラミースだって、僕だって、

 キミの下僕(げぼく)じゃなくて、ただの友人さぁ。」


「うぅぅ…

 自分のことは、自分でやれって言うの!?」


「当たり前さ!

 自由な鳥になりたいなら、

 自分のことは、自分でやらなくちゃいけないよ♪

 他人になんでもやってもらいたいなら、

 お城や町で、みんなにブツブツ小言を言われながら生きるしか、

 ないんじゃないかな?」



「あら、姫様、おはよう♪」

フラミースが、外から戻ってきました。

メイド服のエプロンをカゴ代わりにして、

野草と野イチゴを抱えていました。


「あら!フラミースったら、気が利(き)くじゃない♪

 アオミの朝ごはん、持ってきてくれたのね?」


「え?ちがうわ?

 これは、私の分よ。

 姫様が病気で寝込んでるなら、取ってきてあげるけど、

 元気なんでしょう?自分で取ってきたら、いいんじゃない?」


「あははは!

 僕が、食べられる草を教えてあげるから、チャレンジしてごらんよ♪」


アオミ姫は、トコッシーに教わりながら、

自分で、いくつかの野草と野いちごを摘(つ)みました。

しげみの中にしゃがみ込むなんていう作業は、

アオミ姫にとって、生まれて初めての経験でした。

もちろん、小屋に寝泊りするなんていうのも、初めてなんですけども。


『アオミ姫』

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