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エピソード11 『イエスの子らよ』

午後は、工芸室に行ってみようってことになったの。

さっきエルサが座面を張り替えたイスだけど、

あれ、修道女が手作りしてるんですって!

ゴシック調の彫刻がほどこされた、立派なイスなのよ?それも手作りされてる。

で、工芸室に向かって歩いてたんだけど、

私たち、途中でシスターに呼び止められちゃった。

「穀物倉庫の掃除、人手が足りないんだけど、

 あなたたち、手伝ってくださらない?」

よりによって、昨夜私が怒られた、あのノッポのシスターだったわ!

私はエルサよりも借りてきたネコになって、

シスターが言い終える前にはもう、大きく返事していたわ。

「もう!ヘンな仕事引き受けないでよ!」エルサがふてくされた。

「ごめんなさい。つい反射的に、ね。

 でも、穀物倉庫の掃除って、そんなにヘンな仕事なの?」

「あったりまえじゃない。掃除よ?

 それが穀物倉庫ともなると、全身真っ白けになっちゃうんだから。」

「…だから、人手が足りてないのね…」


エルサに連れられて、穀物倉庫に行ったわ。

倉庫なんていうのは、裏っかわにあるのよ。日の当たらない、静かなとこに。

行くだけで物悲しい気持ちになっちゃう。

トントン。

「失礼します。お掃除を手伝いにまいりました。」

エルサが礼儀正しくあいさつしたけど、

「………………。」

何の応答も無かったわ。誰もいないのかしら?

カギは開いてたので、勝手に入らせてもらったわ。


「うわー!ホントに真っ白ね!」

倉庫は一面、床だけじゃなく壁も天井も、粉で真っ白け。

倉庫の白さにあっけにとられていると、

不意に風が吹いてきて、

開いたままだった木戸を、バタン!と乱暴に閉めた。

その衝撃で、積み上げられてた粉袋が1つ、床にドスンと落ちちゃった!

その衝撃で、床の粉という粉は舞い上がって、一面が雪景色!

「きゃはははははは!」

うっとおしさも通り越して、大笑いしちゃったわ。

それだけじゃないの。間髪入れずにビックリ!

「これこれ!仕事を増やすんじゃないよ!」

誰もいないと思ってた倉庫の奥から、声がするじゃない!



『イエスの子らよ』

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