午後は、工芸室に行ってみようってことになったの。
さっきエルサが座面を張り替えたイスだけど、
あれ、修道女が手作りしてるんですって!
ゴシック調の彫刻がほどこされた、立派なイスなのよ?それも手作りされてる。
で、工芸室に向かって歩いてたんだけど、
私たち、途中でシスターに呼び止められちゃった。
「穀物倉庫の掃除、人手が足りないんだけど、
あなたたち、手伝ってくださらない?」
よりによって、昨夜私が怒られた、あのノッポのシスターだったわ!
私はエルサよりも借りてきたネコになって、
シスターが言い終える前にはもう、大きく返事していたわ。
「もう!ヘンな仕事引き受けないでよ!」エルサがふてくされた。
「ごめんなさい。つい反射的に、ね。
でも、穀物倉庫の掃除って、そんなにヘンな仕事なの?」
「あったりまえじゃない。掃除よ?
それが穀物倉庫ともなると、全身真っ白けになっちゃうんだから。」
「…だから、人手が足りてないのね…」
エルサに連れられて、穀物倉庫に行ったわ。
倉庫なんていうのは、裏っかわにあるのよ。日の当たらない、静かなとこに。
行くだけで物悲しい気持ちになっちゃう。
トントン。
「失礼します。お掃除を手伝いにまいりました。」
エルサが礼儀正しくあいさつしたけど、
「………………。」
何の応答も無かったわ。誰もいないのかしら?
カギは開いてたので、勝手に入らせてもらったわ。
「うわー!ホントに真っ白ね!」
倉庫は一面、床だけじゃなく壁も天井も、粉で真っ白け。
倉庫の白さにあっけにとられていると、
不意に風が吹いてきて、
開いたままだった木戸を、バタン!と乱暴に閉めた。
その衝撃で、積み上げられてた粉袋が1つ、床にドスンと落ちちゃった!
その衝撃で、床の粉という粉は舞い上がって、一面が雪景色!
「きゃはははははは!」
うっとおしさも通り越して、大笑いしちゃったわ。
それだけじゃないの。間髪入れずにビックリ!
「これこれ!仕事を増やすんじゃないよ!」
誰もいないと思ってた倉庫の奥から、声がするじゃない!
『イエスの子らよ』