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エピソード11 『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』

私と弟のルチアーノは、

学校から帰ってくると、海賊船の屋根に上って、楽器の練習をするようになったわ。

まだまだヘタっぴだけどね。

大丈夫。お店の中ではジャズの音楽を流してるから、私たちの音は気にならないわ。

私たちがパープー吹いてると、ますます大勢の人が、この店に気づくのよ。

上手いかヘタかはどうでもいいの。宣伝ってそういうものなのよ。やかましいもん勝ちなの。

でも、そのうち上手になってみせるわ。ヘタよりは上手いほうが良いもの。

始めてから3年間は、ヘタっぴでもしょうがないのよ。楽器ってそういうものなの。

名奏者が誕生するためには、誰かが騒音に耐えなきゃいけないのよ。

名奏者って、そうして誕生するの。覚えておいてね?


悔しいわ!ルチアーノのほうが、上達が速いの。

あの子のほうが少し早く始めたっていったって、

勉強もスポーツも、私よりぜんぜん出来ない子なのよ?

それなのになぜか、サックスだけは上達が速いの。

「どうなってんのよ?一体。」って尋ねたら、ヘンなこと言うのよ。

「だって僕、もう15年もサックス吹いてるんだからさ。」ってね。

は!?ルチアーノってまだ11歳よ!15年も吹いてるわけないじゃない!

ヘンな子なのよ。

ぜんぜんしゃべらないクセに、たまにしゃべったかと思ったら、ヘンなこと言うわ。

まぁ、悪い子じゃないけどね。悪い子じゃないわ。

でも、あの子の上達が速いおかげで、私も上達したわ。

だって、弟に負けるなんて悔しいじゃない?そりゃ必死にもなるわ。


私たちが船上で楽器の練習をしていると、

近寄ってきたのは、お客さんばかりじゃなかったわ。

地元の子らしき少年が、じーっと私のこと見てるの。

同い年くらいじゃないかしら。色の黒い、体格の良い男の子。きっと漁師の子よ。

あんまりにもしょっちゅうだから、「なぁに?」ってにらみをきかせたら、

おびえて逃げていっちゃったけどね。



『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』

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