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エピソード11 『沈黙のレジスタンス』

エピソード11


そこには、広い広い洞窟が広がっていた!

洞窟じゃない。地下通路と言ったほうが良いだろう。

人の手で掘られた通路と小部屋が、どこまでも広がっている。

一番最初の小部屋には、ワインのタルが転がっていた。

「オレが飲んでた酒は、ここから拝借してきたんだよ。

 ホントに美味いんだ。1000年くらい寝かせてあったんじゃねぇの?」

「これは…まさか…!!」

「なんだ?」


そのときだった!

ガサガサと物音がしたかとおもうと、

恰幅のいい大人たちが、この地下通路に飛び降りてきた!

「ほほう。本当にありましたな!てこずらなくて良かった!」

「誰だ!お前たちは!?」

デニーはとっさに身構え、大声でほえた。

「待って!」僕は冷静に、デニーを制止した。

「ひょっとして、ヒロト監督のお知り合いですか?」

「ヒロト?そんな者は知らん。

 そんなことより君たち、早く家に帰りたまえ!ここは危ない。」

「まさか、ラーマ法王の手先か!」僕もまた、身構えた。

「おい、何だ?どうなってんだ?ヒロトとかラーマとか!?」

「とにかくこいつらは敵だよ!」

あぁ、もっと早く、あの話をデニーにしておくべきだった…!!

「ちょっと待てよ!

 何でおっさんたち、ここを知ってるんだ?誰に聞いた!?」

大人たちから一歩遅れて、少年が地下へと降りてきた。

「チャゴス!?

 オマエがしゃべったのか!?」

「ご、ご、ご、ごめんなさい…」



僕たちはひとまず、おとなしく撤収することにした。

チャゴスはそのあと、デニーのところに一人でやってきた。

デニーは、恨みをこめてチャゴスをにらみつけた。

「よくもノコノコ来れたもんだな!裏切りもんが!」

「ごめんなさい。でも…」

「でももクソもあるか!ふざけんじゃねぇ!」

デニーはチャゴスの胸ぐらを掴んでかかった。

僕は、あわててデニーを制止した。

「待って!何か話したがってるよ。まず聞いてやろうよ。」

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…」

「ごめんはいいから早くしゃべろ!」

「あの、えっと、その…

 あのおじさんたち、パパのこと牢屋にぶちこむって言ったんだ。」

「どういうことだ?何かやらかしたのか?」

「わかんない。わかんないけど、

 パパには何か、気まずいことがあるみたい。」

「金持ちって、何かしら気まずいことをやらかしてるんだよ。」

僕はチャゴスを助けるように言った。

「それで?」デニーは話の先を促す。

「それで、おじさんたちが

 『地下都市の場所を教えるなら、助けてやる』って、そう言ったんだ。

 僕の聞いている目の前で。」

「つまり…

 オマエの親父をというより、チャゴスを揺すったんだな?」

「それで…僕…」

「わかった。わかったよ。

 いくらいたぶられてても、オマエの肉親だからな。

 家族を守ろうする気持ちはわかる。」デニーは冷静さを取り戻して言った。

「ごめんなさい。ごめんなさい。」


「ところでエニス?

 オマエ、何か事情を知ってるふうだったじゃないか?

 ヒロトとかラーマとか…」

「それがね…」

僕は、現場監督から聞いた話を、そのままデニーに伝えた。

「ラーマ法王の隠ぺい工作か、クソったれ!」

「どうにかして食い止めようと思ったんだ!

 だから僕、この村に戻ってきたんだ!

 それなのに…逆に僕がヤツらの助太刀になってしまったなんて…」

「いや、まだ諦めるのは早いぜ。

 でも、ちょっと静かに様子を見よう。」



『沈黙のレジスタンス』

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