エピソード11
カティは、
フィンランドで最も有名なチョコレートメーカーで働いてるそうです。
卵型のチョコを、1つ私に食べさせてくれました。
「美味しい♪」と私がはにかむと、
「うふふふ!ウソでしょ!?」とカティは大笑い。そして、続けます。
「私、仕事としても趣味としても、世界中のチョコを食べたわ。
さて、どこの国のチョコが一番美味しかったと思う?」
「え?どこの国だろう…
ゴディバは…フランスのメーカー?フランスのチョコなんて美味しそう。
それか、ベルギー?ベルギーはチョコの本場なんでしょ?」
「ゴディバはベルギーのブランドね。
フランスもパティシエが多いからスイーツが盛んだけど…
どちらにせよ、世界一とは思わないわ。ゴテゴテし過ぎてて。
うちの工場の女性たちは、満場一致で、日本を推すわ!
それも、100エンで売ってるシンプルな板チョコ。ただし、ビターのやつね。」
「日本の、100円の板チョコ!?」
「そうよー♪あれが世界で一番美味しいわ。
シンプルだけど洗練されてて、美味しい。飽きないしね。
それが100エンで買えるんだから…
日本の食品メーカーって、すごいと思うわ!
あなたたち、自分の国にもっと誇りを持ったほうが良いわよ(笑)
ゴディバもモロゾフも、それはそれで良いんでしょうけど、
日本の100エンチョコは、とってもハイクオリティなんだから!」
灯台下暗しとは、このことか…
アンティは、
エンジニアであるそうです。コンピューターエンジニア。
アンティの部屋を見せてもらいましたが、
パソコンが3台も4台も並んでいます。それだけで部屋の半分くらいを占めてる。
そして残りの半分はというと、
アイスホッケー選手のフィギュアが、あちこちに飾られています。
アンティは、プロ・アイスホッケーの熱狂的なファンなのだとか。
普段はとても穏やかでシャイですが、アイスホッケーの話をするときだけは、
子供みたいに目をキラキラさせて、ハイテンションになります。
「カティの趣味は何なの?」と尋ねると、
「私の趣味は、アンティよ♪」と恥かしそうに笑っていました。
二人は、カティが積極的に追いかけることで、結ばれたのだそうです。
フィンランドの男女は、
たいていそうであるらしいです。女性のほうが、恋愛に積極的なのです。
男性は、十代の頃は恋愛に興味津々なのですが、
ひととおり経験してしまうと、すっかりおとなしく、受身になってしまうんだとか。
すると女性たちは、
自分から積極的にアタックしていかないと、恋人を作れないのです。
フィンランドは女性もおおむね穏やかで、肉食女子には見えないんですが、
こと恋愛となると、積極性が顔を出すようです。
カティは言いました。
「最終的に、女性のほうが恋愛欲求が強いのよ。性欲も、ね。
西欧も日本もアメリカも、女性たちは、その事実を認めようとしないわ。
だからストレスが溜まるのよ。
貢いでなんかもらえなくたって、会いに行って抱きしめてもらえるなら、
それだけで幸せなのよ。だから、外食もショッピングも必要ないわ。」
私は、ヨーロッパというのはだいたいどこも同じだと思っていたのですが、
どうも、フィンランドというのは、
他のヨーロッパ地域とは価値観が異なるようです。
「宮廷文化が存在しないからだろう」と、アンティは言っていました。
女性たちのお姫様願望や尽くされたい願望は、
煌びやかな宮廷文化が発端にあるらしいです。
「誰もがマリーアントワネットに憧れてるのよ」カティは笑いました。
フィンランドの女性は、何にせよ積極的かもしれません。
積極的というか、自立的なのかな。
朝のニュース番組を眺めていて、私はビックリしました。
国会議員の半分くらいが、女性なのです!
そればかりか、大統領まで女性です!
「アタリマエよ!
男女平等を望むなら、男性に文句言ってるだけじゃダメだわ。
女性だって努力して、自立して、発言力を持たなきゃ!」
カティは、力強く笑いました。
カティは、可愛らしい顔をして、力強いことを言います。
こういうタイプの女性は、日本ではほとんど見たことがありません。
私は、フィンランドの女性に尊敬を感じはじめました。
『真理の森へ』
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