エピソード12 『アオミ姫』
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- 2023年3月31日
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エピソード12
「ねぇ、トコッシー?
お風呂沸(わ)かすのに、どれくらい時間かかる?」
「お風呂?1週間はかかるんじゃないかなぁ。」
「1週間!?何バカなこと言ってんのよ!!」
「だって、この小屋にお風呂なんて、無いんだもん。
お風呂入るなら、お風呂を造ることから、始めなくちゃ♪」
「はー!?あなたは、どうしてるの?」
「昨日、言わなかったっけ?
泉が、お風呂の代わりさ♪」
「泉に飛び込むの!?正気なの!?」
「泉に飛び込むことくらい、オレンジの町の人だって、やってるよ?
姫さん、プールにも入ったこと無いのかい?
それと同じようなモンだよ♪」
「ホンキなのね…
で、水着は?」
「水着?そんなモノは、無いよ。
欲しいなら、自分で作ればいいんじゃないかな?
僕は、水着の必要性は感じないけど…」
「うぅ…ハダカで入るしかないってわけね…」
アオミ姫はしぶしぶ、ハダカで泉に飛び込むことに、決めました。
「あ、トコッシー!
アオミの護衛(ごえい)、してくれる?
アオミ、泳げないし、服を盗まれちゃうかもしれないし…」
「かまわないよ。見張ってればいいんでしょ?」
アオミ姫は、小屋の外に出ました。
「おや?姫様も、水浴び?」
またもや、フラミースと出くわしました。
フラミースは、はだかんぼうです。
「あなた、ハダカで泉に入って、恥ずかしくないの!?」
「恥ずかしいもなにも…
ここには、誰も居ないでしょ?
タヌキやオオカミは居るかもしれないけど、
べつに、恥ずかしくはないわ♪」
「あ、そう…」
どうも、アオミ姫に同調してくれる人は、居ません。
アオミ姫は、
泉のほとりで、服をぬぎ始めました。
ふと、小屋に目をやると、
窓から、トコッシーがこちらをながめています。
「ちょっとアンタ!
レディのハダカを見るって、どういうつもりなの!?」
「えー!?
見張りを頼んだのは、姫さんのほうだぜ??
姫さんがイヤっていうなら、僕、部屋でそっぽ向いてるけど?」
「そうしてちょうだいよ!当然だわ!」
「…でも、
姫さんがおぼれたり、オオカミにおそわれたりしても、
気付くのがおそくなっちゃうけど、いいかい?」
「えー!?それは困るわ!!
ちゃんと見張っててよ!!
小屋の中に突っ立ってるんじゃなくて、泉のそばに待機(たいき)してて!」
「じゃぁ、姫さんのハダカを、まじまじ見ることになっちゃうけど、
それでイイんだね?」
「えー!?それは困るわ!!」
「…じゃぁ僕、どうしたらいいの?
姫さんは、ワガママ過ぎるやぁ。
僕は、姫さんの要望に対して、ぜーんぶ、
出来ることを、してあげてるぜ?
それでも不満だって言うなら、僕らは気が合わないから、
他の小屋でも、探したほうがいいんじゃないかい?」
「他にも、小屋があるの?」
「それは知らないよ。僕はヨソ者だもん。
オレンジの町の人たちは、この小屋の情報しか、持ってなかったけど…」
「じゃぁ私、どうしたらいいの!?」
「自分で、小屋も造ったらいいんじゃない?」
「そんなの、ムリに決まってんじゃない!!」
「アレもコレもムリだって言うなら、
もう少し、謙虚(けんきょ)になったほうが、いいんじゃないかなぁ?
それに、キミが、
男性である僕と共同生活をしたいなら、
僕に対してくらいは、ハダカを見せる覚悟が無いと、
不便すぎてキツいんじゃない?」
アオミ姫は、何も、言い返す言葉がありませんでした…
姫のワガママは、城の外では一切通用しないし、
トコッシーの前では、一切通用しません。
姫は、しぶしぶ、
ハダカになって、泉につかりました。
泉の水は、とても澄(す)んでいました。
そして、水面(みなも)が、ところどころキラキラ光っていました。
まるで、水の精霊がダンスでもしているかのようです♪
姫は、美しい水面を眺(なが)めていると、
みるみるうちに、気分がおだやかになっていくのを、感じました。
泉の水には、そういうフシギな魔法が、あるのです♪
『アオミ姫』