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エピソード12 『人魚たちの償い』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月28日
  • 読了時間: 2分

エピソード12

私たちはまず、ヤシとやらの実を食べてみることにした。

しかしこれが、なかなか割れない。

「だから言ったでしょ。」母は言った。

地面に打ち付けたり、流木を叩きつけたりしてみたけれど、だめだった。

アントニーが、もっと硬い地面なら割れるかもしれないと言うので、

ヤシの実を持って、岩場まで行ってみた。

父が岩場に思い切り叩きつけると、3度目で見事、実は割れた。

中の液体が飲めるとのことだったが、割れた拍子にほとんどこぼれてしまった。

しかし、果肉は果肉でジューシーで、それを食べるだけでも渇きは癒せた。

1日半ぶりの食事とあって、私たちはそれをムシャムシャ食べた。

食べ物のアテが生まれただけで、私たちの安堵ははとても深くなった。

どうにか生き延びられそうだ。


父はそのまま、岩場を奥まで歩いていった。

この先に、風雨のしのげる岩倉があるらしい。

人魚の言ったとおり、300フィートほどのところに、洞穴が開いていた。

入り口のあたりは波が浸水してくるけれど、

奥までいけば大丈夫そうだった。

どうにか、風雨もしのげそうだ。

しかし、地面がどうにもゴツゴツしすぎている。

これでは横になって眠るのは痛すぎると思われた。

「浜の砂をしきつめよう!」アントニーが提案した。

私たちは服を脱ぎ、襟口をしばって袋状にした。

その袋に浜の砂を入れ、洞穴まで運ぶことにした。

4人分の平地をこしらえるのは、とても大変な作業だった。

その日は一日中、浜と洞穴を往復し続けた。

いや、私は途中でバテてしまった。

軽い熱射病にかかったらしかった。体がだるく、頭痛と吐き気がするのだった。

父の助言で、塩分を摂るために海水を少し飲み、

ヤシの果肉を食べて、早々に横にならせてもらった。

父は、夕暮れ前には母にも休みを取らせ、私の二の舞になることを回避した。

父は、アントニーにも様子を伺ったけれど、

「オレは大丈夫だよ!」と、たくましい答えが返ってきた。

「勉強しなかったぶん、外で遊びまわってきたからね。」

二人のがんばりにより、どうにか4人分の寝床は確保できた。


『人魚たちの償い』

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