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エピソード12 『名もなき町で』

エピソード12

ゆずちゃんもまた、「いつまででも居てくれてもいい」と言ってくれた。

それはありがたい申し出ではあったけれど、

そもそもの僕の望みは、お寺に泊まることだったよね。

ゆずちゃんのアパートにではなく、ゆずちゃんの実家に用事があったんだ。

ゆずちゃんは、僕を実家のお寺に連れていってくれた。

閑静な住宅街にある、静かなお寺だった。


出迎えたのは、お母さんだった。

甲斐性の、そしてよく喋るお母さんで、

「娘とあなたはどういうご関係?」とか、

「お堂で寝たいなんてキチガイじゃないの?」とか、

歯に衣着せず、いろいろ質問してきた。

僕が答える前に、次の質問が飛んできそうな勢いだった。とにかくよく喋る。

仏教信者は寡黙な人が多いから、とても意外だったよ。

それを告げると、さらに意外な返事がかえってきた!

「あらイヤだ!私は仏教信者なんかじゃないわよぉ!」

「え?旦那さんが住職なのに!?」

「そうよ?旦那が住職だから寺の掃除くらいはするけど、

 別に仏教なんて信仰しちゃいないし、神様なんてよくわかんないわぁ。」

オホホホと笑いながら、僕に100コもおまんじゅうを差し出してくる。


お母さんは、多動性の質があるのかもしれない。

こういう女性は、自分でもよくわからないうちに物事を決定し、結婚までしてたりする。

そしてその旦那さんは、とても寡黙だったり遠慮がちな人だったりする。

こういう女性が引っ張ってあげないと、

無欲で遠慮がちな旦那さんは、飢え死にしてしまうんだ。

女性というのは、本当に人を「愛」したとき、

「私がこの人を助けなければ!」と感じてアクションを起こす。それが「真実の愛」なんだよ。



やがて、日課を終えた旦那さんが、部屋着に着替えて姿を見せた。

ゆずちゃんにソックリな顔をしてた。そして、ダライ・ラマにソックリな顔をしてた。

「いやいや、お恥ずかしい。妻がやかましくて申し訳ない。

 妻すら諭せない坊さんが、大衆を諭せるはずもないですね。ははは。」

住職は、とても面白い人だった!

「いや、私ね?ペット供養の依頼を受けても、断っちゃうんですよ。

 『寺で供養しなくても、ペットは成仏してますよ』ってね。」

すると奥さんが競うように言う。

「私が電話に出た場合は、ひとつ返事で承りますけどね!

 成仏だかなんだか知らないけど、

 仕事を受けないと食べていけないんだから!」


やっぱりだ!

住職は無欲すぎるし誠実すぎるし正直すぎるから、

奥さんがでしゃばらないと、この家庭は回らない。

ジェシーとようこママも、似たような構図だったでしょ?

男性が誠実であるためには、パートナーがパワフルじゃないと厳しい。

ゆずちゃんは、

ミクシィで僕を見つけたとき、僕に父親と同じ匂いを感じたんだろう。

そして母親と同じように、「私が助けたい」と感じたんだろう。

たいていの「娘」というのは、そういうモンなんだよ。

父親と同じような男にホレて、そして母親と同じような行動をとる。



住職は、僕をお堂に案内し、そしてそこで一晩眠らせてくれた。

僕は、50畳もあるだだっ広いお堂の真ん中に布団を敷いて、

大の字になってグースカ眠った。

とくに怖い夢も見なかったし、肩が重くなったりもしなかったよ。

時々、地元の中学生とかが合宿に利用したりもするらしい。


お寺ってのは本来、

大衆に開放するためにあるんだ。

でも、

「あなたが娘の知り合いでなければ、泊めたりはしなかったでしょう」

と住職が言っていたから、

現代の坊さんたちは、お寺が大衆に開放されるべき場所だなんてことは、

すっかり忘れ去ってしまったんだろう。


『名もなき町で』

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