エピソード12
「は!?」
私はふと目が覚めて、騒然とした!
時間、大丈夫なのかしら!?
空はまだ明るく、永遠のような南国の午後を謳歌しているけれど、
時間は容赦なく過ぎ、すでに17時20分…
私はカツミくんを揺り起こし、二人で船着場まで猛ダッシュ!
ひょっとしたら、最終便の船はまだ、船着場でモタモタしているかもしれない。
しかし…
やはり、船着場はもぬけの殻。もう誰もいない。
日差しのかげったあとの潮風は冷たく、
取り残された私たちを、不安な気持ちで包みこむ。
「ごめんなさい!
私がもし、カツミくんのリュックをビーチに置いたままにしていたなら、
誰かが私たちのこと気づいてくれてたかもしれないのに…」
私は急に、罪悪感で胸が苦しくなった。
「いいんだよ。色々あるさ、旅には。」
カツミくんはふと思いつき、携帯電話を取りだす。
「ダメだな。電波無いね。無人島だもんね。」
念のため掛けてもみるけれど、やはりウンともスンとも言わない。
それは私の携帯電話でも同じ。
私たちは成す術もなく、
ただただぼーっと、海の向こうの恋しい百名を眺めていた。
日が落ちるにつれて、風はどんどん冷たくなってきた。
私たちは、視界のあるうちに風を避けられる岩場を探して、せめてもの避難をした。
あくまで「せめてもの」という感じで、風はどこからでも漏れ、吹いてくる。
クツと靴下が乾かし中ではけないため、足元が余計に寒い。
カツミくんは、リュックの中から防寒具を探しはじめた。
「ごめん。ちょうど洗濯物が溜まってるときで、靴下は綺麗なのないや。」
それでも薄手のダウンジャケットを、私に差し出してくれるのだった。
彼はトレーナーを1枚、着込む。
私はひざを抱えて座り、憂鬱に無心になる。
…いや、無心になろうと思ったけれどそれはうまくいかず、
「お腹減ったなぁ。」思わず、本音が口をついて出る。
カツミくんはまた、リュックサックをがさがさと漁りはじめる。
彼は、オレオとゼリードリンクを見つけると、2つともを私に差し出してくれた。
「はい。食べなよ。」
「カツミくんは…?」
「僕はいいんだ。」
「いいって、お腹減らないの?」
「減らないこともないけど、いいんだよ。」
「よくないよ。せめて、半分こしよう?」
「いいんだよ。これが『旅』ってものなんだと思う。
何か遭ったときにどう反応するか、それを自分で自分に試したかったんだ。
自分のことばっかり考えて、ズルく振舞うなら、
僕は自分で自分にゲンメツする。」
「よくわかんない。」
何か精神的なことを言っているのは、わかる。でも寒さで頭がぼーっとしていて、
あまり難しいことが考えられなかった。
私はお言葉に甘え、オレオとゼリー飲料をいただく。
『星空のハンモック』
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