エピソード12
ユカたち一行は、
怖くなって、せーふぁ御獄(ウタキ)から抜け出してきました。
そして、バス停までの道を引き返し歩きます。
「そろそろお茶でも飲みたいね」と話していると、
道すがら左手に、「瞑想かふぇ」なる施設があるではないですか!
立派な石垣に囲まれた、大きな沖縄古民家です。
「瞑想って、霊感とかのことでしょ?」
ユカは、思わず立ち止まりました。
「よくわかんないけど、霊能力と関係あるよね?」
ユカたちは、思い切って、その施設に入ってみることにしました。
何か教えてもらえるかもしれません。
玄関を探すと、
「かふぇは裏庭→」と小さな手作り看板が立っています。
看板のとおりに、裏側に回ってみました。
裏庭は広く、フットサルでも出来そうなくらいです。
そこにカフェテーブルが幾つか並べられ、カップルの先客がくつろいでいます。
ユカたちはキョロキョロしながら、日よけパラソルのあるテーブルに腰かけました。
やがて、初老の女性がゆっくりと、メニューを持ってやってきました。
「こんにちわ。お茶のお客様でよろしいかしら?」
「え?あ、はい。
えと、お茶以外のお客さんもいるんですか?」
「ここは瞑想と内観の修行道場でもあるんです。
近年は瞑想修行者なんて少ないから、カフェも始めることにしたのよ。オホホ。
目を細めてにこやかに笑っています。
「瞑想っていうことは、おばさん、
霊感に詳しいですか?」
「どうでしょ?人並み以上には興味あるけれど。
でなかったら、せーふぁ御獄のそばになんか住まないでしょうねぇ。」
おばさんも、空いているイスに腰掛けた。
「ですよね。
で、そのせーふぁ御獄でヘンな体験したとか言ったら…信じます?」
「オホホホ。啓示が下ったの?
信じるもなにも、私だってせーふぁの神に言われたから、ここでお店やってるんですもの。」
うん。話が早そうだ。きっと、私たちみたいなのを助けるために、
彼女はここに住まわせれたんじゃないかと思う。
「良かったぁ。
あのね?『北のほうで結べ』って言われたんです。『結びなさい』って。」
「北で?結ぶ?」
「そうです。『結ぶ』って何のことか、わかんなくて…」
ひと呼吸考えて、おばさんは答える。
「ひょっとして…
結び宿のことかしら。」
「結び宿??」
「えぇ。私も泊まったことはないのだけれど、沖縄では割りと有名な宿よ。
今帰仁(なきじん)の辺りだったかしら。ここから見れば北のほうよ。
女性のオーナーが経営する、隠れ家みたいな宿。
いいんじゃない?観光としても面白いところだと思うわ。
ただ…ちょっとわかりにくい場所にあるらしいわねぇ。
あの辺はかなり田舎だから、迷子になると厄介かもねぇ。」
『沖縄クロスロード』
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