エピソード13
ノブさんのパーソナルの紹介として、
もう少しラフな切り口で、語ってみよう。
僕がノブさんに抱いた印象は、
「村上春樹の小説に出てきそうなヒトだなぁ」
といったものだった。
物静かだけど、しゃべる時は雄弁にしゃべり、
確かな持論を持っていて、ユーモアのセンスもある。
…でも、基本は物静かなのだ(笑)
だから、そばに居てとても落ち着く。
相手が出来そうもナイこと、知り得そうもナイことは、
惜しみなく尽くすし、知識をシェアする。
孤独を愛するけれども、ヒトと調和的に接せられる。
なにしろ、このヒト、
元ツアーコンダクターなのだ。
つまり、旅をも愛している!
面白いのが、
ツアコン時代は、爺さん婆さんを甲斐甲斐しく世話してきたのに、
宿の経営者になったら、バックパッカー的な放任主義者なのだ。
彼の築いたゲストハウスを見る限り、
バックパッカーたちの望みを完全に知り尽くしているし、それに応えている。
若い頃には彼も、バックパッカー放浪をしていたのだと思う。
また、一目でわかるのだけれど、
とても美しい瞳をしている!
彼がとても素直で正直なことが、わかる。
瞳には、性格がとてもよく反映されるよ。
特に、男性は、如実に現れる。
だから、ワルなヒトほど、真っ黒いサングラスを好むのさ。
ノブさんはまた、
若い女の子をヒイキしたり、コビを売ったりもしない。
まぁ、エロ親父だったら、
こんな辺境の地には住まないわな(笑)
もちろん、
お客に対してコビを売ったり、ヘコヘコしたりもしない。
ヒトとは違う人生を、
胸を張って、楽しそうに、つつましく、生きている。
吹く風に逆らわず、ひょうひょうと、生きている。
ノブさんに、
「ノブさん、
村上春樹の小説に出てきそうですね!」
と伝えてみると、
澄ました顔で、「そう?」と微笑んだ。
「ボク、村上春樹はそんなに読んでないなぁ」
と、意外な言葉を付け足した。
僕はまた、てっきり、
彼は村上春樹が大好きだろうと思ったし、
この宿での暮らしや彼の半生は、
春樹氏の影響を、ふんだんに受けているかと思っていた。
『無人のお祭り』
תגובות