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エピソード13 『私の彼は有名人』

エピソード13

私は、放送室で、興味深いものを見つけた。

「芸能プロダクション名鑑」なる本だ。芸能プロダクションに特化した、電話帳である。

なぜこんな物が、放送室にあるのだ?

いや、おかしくはない。放送部員には、芸能方面に憧れるメンバーが多いのだから。


私は、この本を貸してもらうことにした。

彼を有名にするための次のアイデアは、オーディションだ。

芸能プロダクションは、どうも、新人発掘のテープ審査を、随時行っているらしいのだ。


彼に、オーディション応募について尋ねてみた。

一応、やってみたことはあるらしい。

けれども、コネがないと、デモ音源を聞いてもらうことすら、ままならないのだという。

「ムダかもしれないけど、やってみて良いですか?」と聞いてみると、

駄目ではないと言うので、ムダかもしれないけど、やってみることにした。


まずは、名鑑をめくりながら、彼の方向性に合いそうな事務所を見繕う。

所属しているミュージシャンや経営理念の欄を見れば、だいたいの傾向は掴める。

そうして、大小20ばかしの事務所をかいつまんでみた。

たくさんのMDを買ってきてダビングをし、そして、手紙をちまちま書く。

パソコンで書いたら簡単だろうが、大量複製したような手紙をみても、

きっと担当者は見向きもしないだろうと思った。


やはり、無駄な努力に終わった。一社からも連絡は無かった。

「コネがないと、聴いてもらえない」そうか。やはりそこが重要なんだ。



私は、親戚一同に連絡を取ってみた。

「友人がミュージシャンをやってるんだけど、プロダクションに知り合いはいませんか?」

と、手紙を書いたのだ。ほとんど顔も見たことないような親戚にも、手紙を送ってみた。

しかし、

残念ながら、芸能事務所と繋がりを持つような親戚は、居なかった。


…が!

埼玉の有名FM局に繋がりのある親戚が、居てくれた!

その叔父さんは、「音源をラジオで流してもらうくらいなら、出来るかも」と返事をくれた。

私は、喜び勇んでその親戚に返事をし、彼の音源を送ってみた。


思わぬキセキが起きた!

「曲を流してもらう」どころの成果ではなかったのだ。

当時、そのFM局では、テレビでも有名な音楽評論家が、音楽番組を持っていたのだ。

彼の音源は、そこまで潜り込むことに成功したのである。

ただし、「番組内のオーディションにエントリーする」というところまでしか、

コネは通じなかった。オーディションでグランプリを獲らせるようなことは、してくれない。

私は、「それで構わない!」と思った。

彼の音源は、耳の肥えた人間が聴いてくれさえすれば、必ず反響があるはずだ。


数日後、彼の音源は、FM局で流れることになった。

大学の構内放送から、埼玉の有名FMまで発展した。

しかし残念ながら、彼の曲は、グランプリを獲ることは出来なかった。言われた通りだ。

とは言え、「特別賞」を受賞したのである。

その音楽評論家は、「若さのわりに、詞も曲も完成している。将来が非常に有望である」

と、番組内で評価してくれていた。

私は、自分のことのように嬉しかった。


あとになって、親戚から聞いたところによると、

グランプリのミュージシャンは、あらかじめ決まっていたらしいのだ。デキレースだ。

すると、彼が獲得した特別賞は、ある意味、グランプリだったようなものだ!


『私の彼は有名人』

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