エピソード14 『クラシックの革命児』
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- 2023年4月10日
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エピソード14
ボクは、
彼がアンコールをどのように取り仕切るか、楽しみだった。
なにしろ、一般的なコンサートでは、
「アンコール前のお辞儀や拍手」もダラダラと間延びして、
ストレスの多いものだからだ。
あのような挨拶や、演技めいたアンコール・リクエストには、
あなたももう、うんざりしていないかな?(笑)
「ローマの祭り」を奏できり、盛大な拍手が沸き起こると、
彼は、汗を拭き拭き客席に向き直り、マイクに向かった。
「えー、皆様。
ご清聴、まことに感謝申し上げます。
この後、
アンコールの拍手が起きるかと思うのですが、
私たちは、そうした『お約束』なことは、行っておりません(笑)
おそらく、第3部までの2時間で、充分にご満足頂けただろうと、
自負しておりますゆえ。
…傲慢ですかねぇ?」
観客は、ドっと沸いた!
彼は続けた。
「…また、
指揮者に花束を贈呈するなどという意味不明な『儀式』も、行っておりませんし、
奏者がパートごとにお辞儀をして、長々と拍手を強要するようなことも、
ウチは行っておりません。
それらは全て、『クラシックの本質』とは関係ありませんゆえ。
どうか、最後に一度だけ、
奏者一同に、暖かい拍手を頂けませんでしょうか?
彼らは報酬がありませんので、皆様の拍手を食べて、帰らせてやって下さい。」
当然のごとく、一同は沸き返った!
ものすごい拍手喝采だった!
こんな拍手は、初めて目の当たりにした!!
もちろん、奏者に向けた拍手でもあっただろうけれど、
この指揮者に贈られた割合が大きいのは、明白だった!
『クラシックの革命児』