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エピソード14 『星空のハンモック』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月19日
  • 読了時間: 2分

エピソード14

愛子さんみたいに、リナちゃんみたいに、素直で積極的だったなら、

こんなに苦しい思いをしなくて(させなくて)済んだだろうに…

内気な私が意中のひとと重なり合うためには、

こんなにたくさんの偶然と口実が、必要になってしまう。

こんなサバイバルは二度とごめんだけれど、

でも、このアバンチュールは最上のドラマで、最上のトキメキだった。



朝、9時を回ると、

私たちは船着場へと向かった。

始発のフェリーがこちらに来れば、帰りの便に乗ることができる。

始発より早く観光客が上陸していることは、通常はありえないわけで、

船頭さんは「野宿したんか!」とビックリしていたけれど、怒られはしなかった。

夏の暖かい時期には、キャンプを張る人もけっこういるらしい。

「今度は夏に来ようね」と、冗談めかしてカツミくんにささやいた。

無人島の誰もいない浜で、星空に見つめられながらセックスをするというのは、

この上なく刺激的で、ドキドキする。


「いろんなセックスがある」という話を以前、タカユキさんが言っていた。

私はあのとき、あまりピンときていなかったけれど、

カツミくんとの件でなんとなく、わかったような気がした。

私は、「シチュエイションに官能する」という感覚をこれまで持っていなかったのだけれど、

そういうものは、たしかにあるのだとわかった。

無人島のビーチでこっそり愛を交わすなんていうのは、やはりドキドキがたまらない。

恋人でもない男の人と愛を交わすのも、やはりドキドキしてしまう。

ましてやそれがリナちゃんのお気に入りで、

リナちゃんとカツミくんは付き合ってはいないけれど、

リナちゃんの彼を寝取ってしまったような感覚があって、

罪悪感を抱くと同時に、やはりそこにもドキドキを感じてしまう。

私は、そうしたちょっとアンモラルなテイストのセックスというのは、

ちゃらちゃらした人のするものだと思っていた。

でもどうやら、そうでもない。私もカツミくんも、ちゃらちゃらしていないし、

人をだましたりするような人間ではない。


『星空のハンモック』

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