エピソード14 『無人のお祭り』
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- 2023年4月11日
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エピソード14
僕は、
この宿を出た後の予定というのは、
コレと言って存在していなかった。
末は、沖縄離島でゲストハウスでも営みながら、
のんびり暮らすのも良いかなぁと考える人間だった。
その程度さ。
だから、
しばらくこの宿を拠点に、与那国に滞在してみようかなとも、考えた。
そんなプランを漏らすと、
「飛行場の、例のバイトが、
多分今でもスタッフを募集しているから、口利き出来るよ」
と、教えてくれた。
「僕、車運転出来ないから、
飛行場まで通えないよ?」
と言うと、
「それなら、自転車を貸すから、
それで通勤すればイイよ。
自転車だと、30分くらいかなぁ。
若いキミなら、可能だとは思うけど。」
と、答えてくれた。
彼は、僕に対して、
別段気に入った気配も見せていなかったけれど、
それでも尚、
僕の人生プランに対して、全面的に手を差し伸べようとしてくれた。
…おそらくだけど、
この島に来たときの自分と、僕が、重なったんだと思う。
ヒトは、
自分が受けた奉仕を、誰かに還元したくなる生き物だからさ♪
僕は、屋根裏部屋でゴロゴロ本を読みながら、
ちょっとばかし、検討した。
けれども、
僕が出した答えは、「NO」だった。
その理由は、「ただのフィーリングだよ♪」と答えるのが、
最も正解に近いとは、思う。
一応、論理的なリクツを言っておくと、
ノブさんは、僕が思い描いているようなゲストハウスを、
もう与那国で運営しているのだから、
同じような展望を持つ僕が、この島に居る必要性は、低い。
ちがう地域に配属されたほうが、全体としては有意義さ。
僕は、久高島が気になっていた。
あの島は、霊的な土壌が、根強く受け継がれてきている。
スピリチュアリズムをこよなく愛する僕には、
与那国や他の離島よりも、打ってつけに感じる。
他の島だと、
僕がスピリチュアルな持論を語ったり実践したりすると、いぶかしげられてしまうだろう。
また、訪れる人たちも、
霊的なことへの興味が強いだろうさ。
(たいていは、勘違いしたスピリチュアリズムだろうけど…)
そして、あの島には、
太陽光パネルを供えた、大きな宿泊施設がある。
働き手に困っていそうな雰囲気だったから、
担い手としてのチャンスが、巡ってきそうな期待が持てた。
また、広い庭がある。
食物を自給自足する場所にしたいのさ。
ノブさんに、
「庭で野菜を育てたりしないの?」
と尋ねてみたところ、
「やってはみたけど、育たなかった」らしい。
潮風がモロに吹いてくる場所だから、
作物の栽培には、向かないらしい。
ちなみに、黒島にも、
無人で放置されたままの、有用そうな宿泊施設があった。
ロッジが10個ほど点在する、リゾート施設のようだった。
海ガメの保存を推進している島だから、精神性も悪くナイだろう。
牛とクジャクばっかりの島で、見るモノに乏しいから、
欲深い人々に侵食される危険性も、低い土地だと思う。
僕は、黒島も割りに気に入っているよ。
そうして、
沖縄離島各地に、
資本主義経済から卒業したい人たちが散らばると、
面白い展開になりそうな気もする。
こういうのは、ひっそり展開していったほうがイイから、
興味半分の余計な人たちが来づらい場所のほうが、やりやすいだろうさ。
『無人のお祭り』