エピソード14
私は、彼の雄弁な言葉に耳を傾けていた。
目を閉じて、静かに、とても素直に聞き入っていた。
母の子守唄に溶ける、無垢な子供みたいに。
男の人に対してこんなに素直な気持ちになったのは、
生まれて初めてのことじゃなかろうか。
私は基本、男性を尊敬していないし好いていないから。
そしてまた、不思議なことが起こるのだった。
彼の論説に耳を傾けていると、
私の子宮がうずくのだった。膣がまた、濡れてしまうのだ。
彼の論説に耳を傾けているだけで、
私の子宮がうずくのだった。膣がまた、濡れてしまうのだ。
彼の手は私のどこにも触れていない。何の愛撫もされていない。
もちろん、自分でも何もしていない。
ただただ、彼の論説に耳を傾けているだけで。
…どうやら、女という生き物は、
尊敬できる男性を見つけると、子宮がうずいてしまうらしい。セックスしたくなるのだ。
「優秀な遺伝子を宿したい!産みたい!」という本能が、
畏怖の念をトリガーにして、ざわめき立つらしい。
私たちは、とても微細な感覚で、
男性を嗅ぎ分けなければならないんだ。本当は。
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2014/06/06 完筆
『自由の空へ』