エピソード15 『お遍路さんの集まる喫茶店』
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- 2023年3月30日
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エピソード15
3人目の方は、少しじっくりと、紹介させて下さい。
あれは確か、
2009年も8月中旬の、暑さも最高潮の時分でした。
夕方4時になっても気温が下がらず、
常連のおばあちゃんが、お孫さんと一緒に、
店先に、水撒きをしてくれていたのです。
店の前を、一人の歩きお遍路さんが、通りました。
おばあちゃんは、お孫さんに、
「ほれ、水が掛かったらいけないよ」
と言って、ホースを内側に向けるよう、促したのです。
「孫が失礼を、ごめんなさいねぇ」
と、謝りながら、彼の顔を見上げる(190近くもあるのです!)と、
気分を害するどころか、満面の笑みで、
「いやいや!
お兄ちゃん、暑くてクタクタだから、
顔に、お水を掛けておくれ♪」
と、思いがけないことを、言ってのけたのです。
お孫さんは、嬉しくなって、
同じように無邪気な笑顔で、彼にホースを向けました。
彼は、その水しぶきをたいそう喜び、
退屈していたお孫さんの泣きべそを、虹色スマイルに変えてしまったのです!
おばあちゃんは、堪らず、
「お遍路さん!
この店で休憩していかれたらどうです!?」
と、普段私がやっていることを、代行してくださったんです。
彼もやはり、
持ち金のことが頭を過ぎったようなのですが、
「これも、おじょうちゃんが作ってくれた縁だよね♪」
と笑うと、お店に入ってきたのです。
…とにかく、
何を言っても、何を言われても、笑っている人なのです(笑)
私は、彼が店に入ってから、
その存在に気づきました。
おばあちゃんが、簡潔に紹介をしてくれたので、
いつもの「隠れお接待モード」で、対応をしました。
やはり、
コーヒーなどは無駄金だと感じられたようですが、
「美味いコーヒーってことなら、飲んでみよう♪
…ただし、アイスで願いします!
あ、あと、ミルクたっぷりでね♪」
と、お子様みたいなことを、恥ずかしげも無く、言っていました(笑)
私は、
彼のチャメっ気と笑顔を見ただけで、
8時間分の疲労が、吹き飛んでしまいました(笑)
続いて、
食事のオーダーを取ると、
「お肉の入っていない料理は、ありますか?」
と、若者らしく無いことを、言います。
ビックリしましたが、
野菜炒め定食を、肉抜きで、特注させました。
主人に、直接作ってくれるよう、リクエストを出しました。
幸い、店が空(す)いていたので、
会話をする時間がたくさんありましたが…
さて!一体何から話せば良いのでしょう!?
…男前だから緊張してしまったわけでは、ありませんよ!(笑)
いかんせん、
突っ込みどころが、多過ぎたのです!!
とてもじゃないけれど、
お遍路さんとは思えない人間なのです!!
『お遍路さんの集まる喫茶店』