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エピソード15 『アオミ姫』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月31日
  • 読了時間: 2分

エピソード15

一行は、藪(やぶ)を切りひらいて、進みました。

ジョウダンでもなく、大げさでもなく、

1分で1メートルしか、進みませんでした。藪を切りひらくのですから。

藪を切りひらくというのは、それくらい、大変なことなのです。

かと言って、

その作業はほとんど、トコッシーが行っていました。


それでも、

トコッシーがふみたおした枝葉がはね返ってきて、

アオミ姫たちの顔や手足に、ピシピシ当りました。

すり傷や切り傷が、たくさんできてしまいました。

蚊がたくさん、刺(さ)していきました。

アオミ姫の立派なドレスは、みるみる、ボロ布になってしまいました…



トコッシーは、休みませんでした。

3時間もずーっと、体力をふりしぼって、藪を切りひらき続けました。

フラミースは、途中から、

トコッシーの背負っているギターを、肩代わりしてあげました。

小さな体のフラミースがギターを背負うのは、

それはそれで、大変な作業でした。


アオミ姫は、何も苦労を背負っていませんが、

アオミ姫が一番、顔をゆがめていました。



トコッシーは、口笛を吹き始めました。

笑顔で口笛を吹いています。


アオミ姫は、それを見て、イライラしてきました!


「ちょっと!トコッシー?

 あなたどうして、ノンキに口笛なんて吹いてんのよ!

 こっそりズルでもしてるわけ!?」


「え?ちがうよ!

 サスガに大変になってきたから、

 口笛吹いて、体力を回復してるのさ。」


「口笛で、体力回復!?」


「そうだよ♪

 楽しい歌を、唄ったり口笛吹いたりすると、元気が出るよ♪

 水や食料がなくても、歌が癒してくれるのさ。

 姫さん、知らないの?」


「知らないわよ、そんなの!

 ねぇ?フラミース?」

とふり返ると、

フラミースも、トコッシーと同じ歌を、小声で口ずさんでいました。


「1つ、2つ、3つの道を、歩いてゆけば、きっとぉ~

 たのしいことが、待っているからぁ~♪」


「ちょっと、何なの?その歌!?」


「姫様、知らないの?

 最近ハヤりの歌なのに♪

 顔と名前をヒミツにするミュージシャンが、歌ってるのよ♪」


「そんなの一度も、聞いたことないわ…

 それで、トコッシーも知ってるわけ?」


「え!?あ、うん。

 テレビで見たわけじゃないけど、知ってるよ♪」


一行は、歌を唄いながら、歩きました。

アオミ姫は、元気が出てきました。

希望が湧いてきました。

なるほど!歌には、元気になるパワーが込められてるようです。


『アオミ姫』

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