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エピソード15 『ミシェル2 -世界の果て-』

エピソード15

バス停から10分歩いて、ようやくユースホステルとやらにたどり着く。

今度は中世建築じゃなくて、30年ものぐらいの現代建築よ。

「あら、広いじゃない?」昨日のホテルより広いくらいだわ。ビックリ。

「ロビーはね。共有空間は広めに出来てんだ。ユースは。」

彼の言ったとおり、ユースホステルは100マルッカだったわ。10ドルよ。

昨日のホテルの1/4!ちょっと安心。これなら少しは長旅できるかも。

部屋も思いのほかキレイでね。シーツにシミ付いてたりしないし、シワすらついてないわ。

もっと秘密基地のロビーみたいなごちゃごちゃしたとこかと思った。

ベッドは6つあって、そのうち3つは誰かが寝てる。良かった。誰もイビキかいてないわ。

私はそっと荷物を置くと、再びロビーに降りた。私の部屋3階なの。

ロビーにはマリウシュがいたわ。私を待ち構えてるふうで。

「行こう。朝食食べようぜ。」彼は親指で外を指す。

「あれ?朝食付くって、受付のお姉さん言ってたわよ?」

「それは明日のぶんだよ。今日のは付かない。」

「あ、そうか。」

外をぶらつく。

食堂を探しながら歩くけど、どこも開いてないのよ。なにせ朝7時だもの。

カフェは開いてるけど、彼、カフェには入ろうとしないの。

「どうしてカフェ入らないの?」聞いてみたわ。

「高いからだよ。簡単な理由さ。

 カフェのコーヒー1杯飲む値段で、食堂で飯が食える。

 まぁ、たまにはカフェも入るがね。暑い午後とか。」

「ふうん。」

そんな彼が選んだのは、やはり簡素な食堂だったわ。

しかも、まだ店開きしてないのに!

イスは掃除の後のままテーブルの上に上げられてて、

コックさんは厨房で仕込みをしてるのよ。

それでも彼、ドアが開いてるからってつかつか入っていっちゃった。

「おじさん。どうも!」

「なんだい?店は昼からだよ。」

「知ってるけどさ、オムレツとパンくらい出ないかな?簡単なのでいいんだ。」

コックさんの答えも聞かずに、マリウシュはもう、イスを床に下ろしてる。

「まぁ出せないこともないが…。」

「ありがとう!」

やがて、注文通りオムレツとパンが出てきたわ。

「マリウシュあなたスゴいのね!」

「褒めてんの?」

「うん?わかんない。ちょっとは褒めてるわ。」

「まぁそうだな。善い行いとも言えない。

 でも、地元民向けの食堂の店主は、気の良い人が多いんだ。」

 観光客向けの高級店やホテルの場合、

 時間外のオーダーなら2倍の金をとるけどね。」

「幾らなのかしら?オムレツ」

私はテーブルの横にあったメニューを開いてみるけど、

オムレツってどこにも書いてないの。

「おじさま。オムレツって幾らですか?」

「そうだな。幾らにしようか。」

「え?」

「だって、オムレツなんてウチのメニューにないからさ。

 値段なんてワシも知らないよ。」

「メニューに無いのに、作ってくれたの?」

「そりゃまぁね。」

「言ったろ?優しいんだよ。

 メニューにあるとか無いとか、営業時間の内とか外とか、関係ないんだ。

 困ってる人がいるなら助ける。それが地元向けの店さ。」

「なんかイイわ、旅って。」

「そうだよ。だから続けてる。

 ところでキミ…ミヒャエルだっけ?」

「ミシェルよ。」

「そう、ミシェル。

 キミ、どこに向かってるんだ?この町がゴールじゃないだろ?」

「あぁ、そうなの。まだまだ前途は多難なの。

 ねぇ、エジプトってまだまだ遠いわよね?」

「エジプト?遠いな、そりゃ。

 ピラミッドで瞑想でもするのか?」

「そうじゃないけど。ちょっと用事あってね。」

「ちょっと待って。」

彼はリュックから地図を取り出した。

「あとまだヨーロッパの国を3つ4つ縦断して、

 トルコ越えて、さらに地中海も越えなきゃならんぜ。」

「そんなに毎日、夜行バスに乗るっていうこと?」

「別に夜行バスに乗らなくちゃならんってわけじゃないだろ。

 列車だって飛行機だってなんでもある。

 夜行バスが一番安上がりだろうけどな。」

「そうなのよ。飛行機に乗るお金があればいいんだけど…。」

「1ヵ月後の便でいいなら5,000マルッカで乗れるよ。」

「知ってるわ、それは。それだけは知ってるの。

 でも1ヵ月も待てないのよ。」

「じゃぁ夜行バス乗り継ぐんだな。もしくは夜行列車のほうが幾分快適だよ。

 …あ、ちょっと待て!

 エジプトって言ったか?」

「そうよ。エジプト。」

「エジプトならパックツアーがあるな、きっと。」

「パックツアー?」

「そうだよ。航空券とホテルがセットになってるから安いんだ。

 行動の自由は制限されるがね。」

「どのみち1ヵ月後でしょ?」

「そうじゃないんだよ。

 パックツアーの場合さ、

 直近の日にちで飛行機に空席が多いと、べらぼうな安売りするんだ。

 航空会社はカラで飛ばしたくないから、そういうことをやる。

 それならホテル代込みで5,000マルッカで飛んで、しかも帰ってこれる。」

「ホント!?すごいわ!!

 でも私、ホテルは要らないのよ。帰りの便も要らないし。」

「いいんだよそれは、破り捨てればいい。

 パッケージツアーってのは、とにかくセットで買わされるってだけで、

 必ずしも泊まらなくたっていいんだ。」

「そうなのね!良かった。

 あ、でも最初の日や2日目くらいはパックのホテルで泊まればいいのよね。

 ドミトリーじゃなくて高級な個室でしょ?」

「いや、節約したいならホテルも破り捨てたほうがいいよ。」

「どうして?損じゃない。」

「損じゃないんだ。一見損のように見えるがね。

 ホテルってのは、中や周りの食い物屋が高いからね。

 何かと金が掛かるんだよ。

 タクシー呼ぶにもマージン取るし、バスチケット手配するにも高いマージン取る。

 それ考えると、ユースホステルにでも泊まったほうが、トータルで安くつくだろう。

 それにキミの場合、情報源が必要だ。

 安宿のほうがキミのような旅人が多いし、情報ノートもある。」

「なるほど。賢いのね、あなた。」

「賢いっていうか、経験だよ。色々やってきた。」

「エジプトにも一緒に行ってくれたり…しないわよね?」

「そこまではやらんさ。エジプトは前に行ったからね。

 チケット取るのは手伝ってやる。食べたら旅行屋に行こう。」

「あなたいい人なのね。」

「いい人だよ俺は。田舎もんだからな。」


『ミシェル2 -世界の果て-』

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