エピソード15 『星空のハンモック』
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- 2023年3月20日
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エピソード15
本島に戻ると、
私はすぐに、麗子さんに連絡を入れた。
なにしろ麗子さんは、私がどこに行ったかも知らないままで、自転車も借りたまま。
幸いにも、あまり心配はしていなかったし、
きっとカツミくんといちゃいちゃしているのだろうと、ある程度のことを察していたらしい。
私は家に帰ったあと、あらためてこの冒険的な恋について、
麗子さんに話して聞かせた。
自分のセックスについて打ち明けるのは、とても恥ずかしくて勇気が要る。
でも、麗子さんにはなるべく何でも、話してしまいたかった。
この人もまた私に何でも話してくれるし、視野の広い相談相手だから。
すると麗子さんの口から、意外な言葉が返ってきた。
「そっか。カツミくんと体を重ねたのね。うらやましいわぁ。」
「え!麗子さんも、カツミくんのこと好きだったんですか?」
カツミくんは麗子さんより20近くも年が下だ。まさか息子並みの年齢の若者に、
このセレブが恋愛感情を抱いてるなんて、私は思ってもみなかった。
「ウフフ。年はずいぶん離れてるけどね。
彼みたいに精神年齢の高い人は、私、好きよ。きゅんきゅんしちゃう。」
「そうなんだ…。
なんか、ごめんなさい。無神経に浮かれモードで話しちゃって。」
「ううん。いいのよ?
私やリナが、ハナちゃんに嫉妬を感じて苦しむとしても、
それはハナちゃんが謝るべきことじゃないの。私はそう考えてる。
嫉妬は、その感情を抱く本人が向き合い、処理する問題よ。
嫉妬という感情は、なるべく暴れさせないように飼いならす努力をしなくては。」
「そうなんですか?どうして?」
「だって。仕方のないことなのよ。
ステキな男性って、数はそう多くないでしょ?
すると、友人たちの間で意中の人がかぶることは、自然なことよ。
そしてその子たちの中には、彼に振り向いてもらえる人もいれば、もらえない人もいる。
振り向いてもらえない人は、我慢するしかないわ。怒る筋合いはないはずよ。」
「でも、なんだかちょっとかわいそう。」
「そうよね。ちょっとかわいそうなことだとも思うわ。
だから、すると、
ある意味ではプレイボーイって、人のためになることもあるのよね。」
「え!?」
「プレイボーイっていうか、『フリーラブな振る舞い』って表現したほうが良いかしらね。
たとえば今の、カツミくんの例で言うとね?
私もハナちゃんもリナも、カツミくんといちゃいちゃしたい。
カツミくんが私ともハナちゃんともリナともいちゃいちゃするなら、
普通はそれは、『ルーズな男』ってレッテルを貼られて、批判されるわ。
でも、私やハナちゃんやリナのトキメキ欲求を叶え、みんなの抑圧を解消してるのだから、
ある意味ではカツミくんは、『善いことしている』って言えないかしら?」
「たしかに、そういう面もありますね。」
「でもそういう男性を肯定するには、
私たち女の側が、『独占じゃなくてもいいや』って思えてないとだめなのね。
一回いちゃいちゃするだけじゃ物足りない!ときどきいちゃいちゃするだけじゃ物足りない!
他の女のベッドには行かないで!私だけのものでいて!って思ってて、
その独占欲を当たり前のものだと肯定してしまうなら…
やっぱりその男性は、誰か一人だけを選ばないといけないし、
または誰も選ばずに姿をくらまさないといけないし、
とにかく、大多数の女性がさみしい思いをしなければならないのね。」
「なんか、難しいですね。」
「そう。難しいのよ。
私は、ハナちゃんに嫉妬を感じても、自分の問題としてハナちゃんを憎まないけれど、
たとえばリナに無人島の恋の話をしたら、
リナは嫉妬の感情をコントロールできず、ハナちゃんを憎み、
きっとひっちゃかめっちゃかになるわ。」
「どうすればいいんでしょう?」
「とりあえず、リナにはカツミくんとのことは話さないようにしてあげて。
そして、カツミくんを知ってる女の子にも、その話はしないほうが良いわ。」
「そうですよね。」
「うん。何でもオープンに話すことってステキだけれど、
嫉妬を克服できていない人には、嫉妬されそうなことは話さないほうが良いんだと思う。
私はこれからも、ハナちゃんや他のお客さんたちの恋愛相談を、
嫉妬をせずに受け止め続けてあげたいって思ってる。
その中で、私みたいに考える人が少しでも増えていったらいいなって、
密やかに願っているわ。」
私もその一人に、なれるだろうか。
『星空のハンモック』



