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エピソード15 『沖縄クロスロード』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月14日
  • 読了時間: 2分

エピソード15

「お父さん。宿はどこですか?」ユカは尋ねる。


衝撃的な答えが返ってきた!

「×△$〇☆$#Ю!」


「え?何ですか?」

「×△$〇☆$#Ю!」

…沖縄なまりが強すぎる!!!!!!

ユカたちは、このとき初めて目の当たりにしたけど、

沖縄語100%の老人たちとは、ほとんど会話にならないのだ!!


お父さんは、

不毛な会話にそそくさと見切りを付け、走り去っていってしまった…



とにかく、お父さんは自販機の先を指指していた。

ユカたちはとりあえず、その方向に歩いてみるしかなかった。

もう7時も近く、かなり薄暗くなってきていた。のんびりはしていられない。

周りには誰もいない。畑ばかりで家もほとんどない。牛ならちょっと居る。

キャリーケースを引きずりながら50メートルも歩くと、

なんと、道は2つに分かれてしまった…


「どっちだろう…?」

暗くなりはじめた今、

無闇に歩いて間違えれば、とりかえしのつかないことになる。

ユカたちは、その場にへたりこんだ。

どうしていいんだかわからない…。



マリは思い出したかのように、

ポーチからフランキンセンスの精油を取り出した。

それをハンカチに垂らして、くんくんやっている。

「何やってんの?」ユカは尋ねる。

「ん?気分転換」マリは短く答えた。

うん。知ってる。マリは時々これをやるから。

ユカのところにも、フランキンセスの香りが流れてきた。

ユカも思わず、鼻から大きく息を吸った。

深い呼吸をすると、多少なりとも心が落ち着く。


およそ10分も、誰も何も言わなかった。自販機みたいに微動だにしなかった。

空の闇だけが、刻々と深みを増していった。



「右…」

ヒヨリが、何かつぶやいた。

「右です。右の道を行きなさい。」

どうやらまた、天使だか火の玉だかと交信しているらしい。


ユカたちは、右の道に目をこらす。

「こわっ!ムリだよ!!」

右の道の先は、原生する木立でトンネルのようになっているのだ!

街灯など、もちろん無い。木立の奥は、漆黒の闇だ。

左の道は、なだらかな農道が続いてて、街灯が点々と照らしている。

左のほうが、100倍は安全そうだ。


「どうする…?右に行ったら死んじゃうかもよ…」


『沖縄クロスロード』

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