エピソード15 夜
ロッドの話を聞いているうちに、辺りはすっかり暗くなってきた。
「お腹減ったわ。どうしよう。
…あ、お腹と背中がくっつくまでガマンしなきゃいけないんだっけ。」
キャロルはしょげながら言った。
「そうでもないよ。
空腹のしのぎ方なら、ミシェルが知ってる。そうだろう?
真っ暗になる前に、腹ごしらえしておいたほうが良いね。」
「そうか!」
ミシェルは、最初に森に迷い込んだときのことを思い出した。
地面をじろじろと見渡す。どこかにベリーが実っているはずだ。
「あったわ!」
ミシェルとキャロルは、ベリーをいくつか摘(つ)み、申しわけ程度に腹ごしらえをした。
あたりは真っ暗になった。
もううかつに歩きまわることは出来ない。
気温もどんどん冷えてくる。
二人はさらに身を寄せ合い、ただただじっとしていた。
しかしケガの功名(こうみょう)とも言うべきか、
極度の疲労から、二人は早々に眠りに落ちた。
光がもどってきた。
小鳥がさえずりはじめ、森もざわめきはじめた。
朝つゆのしずくがほほを打ち、ミシェルは目を覚ました。
「…森の中?
そうよね。夢じゃなかったんだ。」
ミシェルは喜びと悲しみを同時に感じながら、昨日のことを一通り思い出した。
「キャロル、起きて。」
2人はまた、足元にベリーを探し、それでのどをうるおした。
空腹はぜんぜん満たされない。
しかし、もはや空腹などどうでもいいような気がした。
あちこちの神経がマヒしているのかもしれないし、強くなっているのかもしれない。
わめいたところで何も出てこないことはわかっているので、
余計な体力を消耗(しょうもう)したくなかったのかもしれない。
あちこちかゆいしあちこち痛いが、それもあまり気にならなかった。
「さぁ、ここからは僕が道案内しよう。」
ロッドの体もまた、あちこちボロボロだった。
ロッドの案内のもと、
2人は早朝から黙々(もくもく)と歩いた。
昨日よりもさらに長い時間、徘徊(はいかい)しなければならなかった。森は広いのだ。
『ミシェル』