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エピソード16『「おとぎの国」の歩き方』

そうして僕は、このダライラマ村を出発したんだけど…

朝も早くから、とんでもないことが起きた!

あの婆ちゃん、とんでもなく歩くのが速いんだ!

「婆ちゃん!待ってよ!」

僕が呼び止めるのも無視して、

婆ちゃんは、どんどん歩いていってしまう!

婆ちゃん、マカオで競歩の選手だったんだろう。それくらい速い。

走れば追いつけるんだろうけど、

なにしろ背中には、50リットルのバックパックを背負ってるからさ。


…ものの10分で、

僕は、人気(ひとけ)のない山道に、取り残されてしまった…


どうしよう?

引き返したところで、あの村には婆ちゃん以外の人影はなかった。

番猫は、暖めてはくれてもご飯はめぐんでくれないだろうし…

するってぇと、歩くしかない。あてもなく。


僕は、とにかく歩いた。

幸いにも、道は常に一本道だった。

上ったり下ったり、細くなったり太くなったりしたけど、とにかく一本道だった。

時々、小さなほこらや納屋が見え、

そのつど人がいないか確かめに寄ったけど、どれも無人だった。

とうとう日も傾き始めた。

婆ちゃんは、「歩いていけなくもない」と言っていたけど、

よく考えてみりゃ、こんなに曖昧な言葉ってナイよな。

「歩いていけるが、10日かかる」のかもしれないし、

「あの婆ちゃんの足腰なら、行けなくもない」のかもしれないし。

とはいえ僕は、足を止めるわけにはいかない。

どんだけ辛かろうがアホらしかろうが、婆ちゃんが憎かろうが、

やめるわけにはいかなくなっちゃたよ。

夕日が沈みはじめるのを見て、今日中にたどり着くのは断念した。

こんなところに村があるとは思えなかったから、

次に見つけた納屋でストップして、そこで風雨をしのぐことにした。


お腹が減った!朝ご飯以降、何も食べてない。 

食べられる草とかナイのかな?よくわかんない。

フルーツが実ってたりはしない。

高地だから余計に、食べられる植物は少ないんじゃないかとおもう。

そもそも暗くて見えないし、

探すことはあきらめて、空腹に耐えることにした。


空腹に耐えるというのは、地味に苦しい。地味に難しい。

苦しむくらいなら死にてぇ!なんて感じたりもするけど、

どうせ、飢え死にするためにはまだあと30日くらいはかかるんだろう。

そう考えてみると、

空腹なんてのは、たいした危機じゃないのかもしんないな。

危機のように感じて、すぐに何か食べようとしちゃうけどさ。

そんなこと考えてると、

考えてる間は空腹を忘れてられるってことに気づいた。多少はマシだ。けっこうマシ。

そうか、何か考えればいいんだな。

あの婆ちゃん、

本当にマカオから歩いてきたのかな?

マカオからずーっと歩いたら、どんだけの距離がある?中国横断じゃないの?

それはムチャだろう。

いや、あの婆ちゃんなら出来るかもしんないな。競歩の選手だし。

いや、マカオ出るときから歩くの速かったのかな?

中国横断してるうちに、足腰鍛えられたのかもしんないよ。

いや、並の体力しかない女性が、歩いて中国横断しようなんて考えるか?

するとやっぱり、最初から歩くの速かったのかな…

…考えたって、わかりっこないことさ(笑)

でも、真実がどうかなんて、どうでもイイことなんだ。

とにかくヒマ潰しにはなったし、空腹を少しは忘れさせてくれた。



『「おとぎの国」の歩き方』

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