エピソード16
私はまず、所持品について、尋ねました。
なにしろ、彼、
ほとんど何にも、持っていないのです…
笠と杖を持っていたため、お遍路さんであると察知出来ましたが、
それ以外は、何も、お遍路らしく無いのです!!
「あなた、リュックサックは?」
「あぁ、リュックは、
伊座利のキャンプ場に、捨ててきちゃいました!」
爽やかに、笑っています…!!
しかも、
何やら突っ込みどころが、更に増えてしまいました!
私は、
頭の中で情報を整理しながら、
落ち着いて、順番に、尋ねていくことを心がけました。
「じゃぁ、荷物はどうしているの?」
「えーっと、
ウエストバッグは、捨てなかったけど…」
確かに、お尻のところにウエストバッグが結ばれていますが、
それにしたって、ペッチャンコです!
「あなたそれ、何が入っているの?」
私は、目をクリクリさせながら、尋ねました。
「えーっと、
Tシャツとトランクス、失くしちゃったから…
今入ってるのはぁ、
せっけん?
歯ブラシ?
パスポート?
…以上!」
「…は!!??」
私は、店中に響き渡りそうな大声で、言ってしまいました!
「…あなた、
正気なの!?」
なにしろ、
通常、歩きお遍路さんというのは、
少なくとも、40リットル程度の容量の、登山用リュックを背負い、
必需品をパンパンに詰めているのです!!
「え!?
他に何かあったかなぁ。
あ、この帽子と、杖?」
「いや、そういう問題じゃ無いわよ!
着替えとか、寝袋とか、あるでしょう!?」
「いや、だから、
着替えは、キャンプ場の焼却炉の中で、焦げてますよ(笑)
寝袋は、欲しいけど、持ってません!」
「…あなた、
それで、何日歩いてるの?」
「えぇーっと、
1、2、3…、今日で、四日目かなぁ?」
「その間、着替えはどうしたの!?」
「Tシャツとトランクスは、
1枚ずつ持ってきたハズだったんだけど、
背中で乾かしながら歩いてたら、いつの間にか、無かった!(笑)
だから、
歩いてて川を見つけたら、じゃぼーん!」
「…そしたらもう、着る物が、無いじゃない!?」
「いや、
ビショ濡れのままでも、2~3時間も炎天下を歩いてりゃ、
カンタンに、乾いちゃうから♪
それに、
ビショ濡れのTシャツ着て歩いてると、
絶好の暑さ対策にもなって、一石二鳥♪」
「…あなた、バカなの?天才なの!?」
「あはははは!バカなんですよ(笑)」
「…つまり、天才なのね…!!」
『お遍路さんの集まる喫茶店』