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エピソード16 『人魚たちの償い』

エピソード16

5日目。

私は、昨夜イレーナから聞いた話を、3人にした。

やはり3人とも、戸惑いを隠せないようだった。

ここから脱出するための努力をしていると思っていたのに、

ここで際限なく暮らし続けろだなんて…

それこそを、私たちの魂が希望しているなんて…

「魂が望むって、どういうことだ?」アントニーが首をひねった。

「頭とは別の、心の奥のほうの思考のことを指すのだろう。」父は答えた。

「で、どうする…?」

「父さんはな、これまで、

 『自分がなすべきことをやらねば』と思って生きてきた。

 それが、以前はスペインでの医療従事であったし、

 最近は、開拓地での僻地救助だった。

 しかし、魂とやらがまったく違う人生を望んでいるのならば…

 そこに身を捧げても良いかなと、感じている。

 しかし、これも移住のときと同じだよ。

 おまえたちの意思をないがしろにすることは、できない。」

母は言った。

「私はあなたについていきます。

 これが漂着の初日だったら、一刻も早く帰りましょうと請うたけれど、

 案外、ここの生活に適応できるようになってしまったのでね。」

アントニーは続いた。

「オレもいいよ。サバイバル生活、悪くないぜ。

 ずっと遊んでるようなもんだからな。

 それに、海賊船のお宝とか見つかるかもしんないぜ?」

「金貨がいっぱいあったって、この島にいたら意味ないじゃない。」

「わははははは。」

私は、みんなの邪魔をしたいとは思わない。


そして私たちは、ここで生きていくことを決めた。

それからは毎日、少しずつ開拓を進め、

できることを増やしていき、生活道具を充実させていった。

少しずつ少しずつ、私たちはサバイバルの知恵を身につけていった。

約束の日を逃さないように、カレンダーを付けることもはじめた。

肌は小麦色に焼けていき、筋力もついてきた。

父はゆとりができると、「積年の夢だったんだ」と、

絵の練習をはじめた。砂浜をキャンパスにして。

アントニーは少しずつ遠くまで出かけ、いろんなものを見つけてきた。

そして私は、毎日欠かすことなく、美しい海をゆっくり眺めた。

私たちは案外、この生活を楽しんでいた。喜んでいた。

「サバイバル」というような痛々しい響きがあるのは、最初だけだった。

食とねぐらの確保は難しくなく、

ぜいたくさえ言わないのなら、むしろ都会での日々よりもずっと楽だ。

国からの義務もなく、救患からの重圧もなく、勉強も試験もない。競争も裏切りもない。

一日の大半を、思ったように過ごしていられる。

絵を描き、海を眺め、島を探検する。限られた食材で料理を研究する。


『人魚たちの償い』

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