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エピソード17 『「おとぎの国」の歩き方』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月4日
  • 読了時間: 3分

翌朝。朝日ととも出発だ。

…と、そうしようと思ってたんだけど、体が動かなかった!

昨日はバックパックを背負って、一日中山道を歩いたんだ。無理もないさ。

体が動かないことに気づくと、

僕はあっさり、二度寝にかまけることにした。

一人旅って、こういうとき気楽だよ。

別に誰に怒られるわけでもないし、誰を待たせてるわけでもない。

…待ってないよね?婆ちゃん。

とにかく、急ぐ必要性はナイんだろうと思ってさ。

体が満足するまで、ゆっくり眠ることにした。

筋肉痛だと、よく眠れるんだよ。深く眠るし、長く眠る。

おかげで、あっという間に真っ昼間さ。16時間くらい寝たんじゃない?

そして、たっぷり寝ると、思いのほか体力も回復するんだよ。

眠るって素晴らしい。

案外シンプルなんだよ。人生ってのはさ。


この日は5時間くらい歩いて、

今日は小さなほこらを間借りして、婆ちゃんのこととか考えて空腹をしのいで、

たっぷりどっぷり眠って終えた。



3日目。

歩き始めて3日目。ブータンに入って4日目だ。

何だっけ?何してんだっけ?

ふと我にかえって、僕はへらへらとひきつり笑った。

何か目新しいモノを求めて、ブータンに潜入してきたワケなんだけど、

当初イメージしてた旅とは、なんか違う気がするぞ?

まぁいいよ。

とにかく、月並みな旅じゃツマラナイ。僕はそう思ってるからさ。

だから、こんなヘンなのでも、別に悪くはない。

帰国したら、旅仲間にどんなふうに話して聞かす?

僕より歩くの速い婆ちゃんがいるなんて、みんな信じるかな?

僕、「龍だ」とか言われたんだけど、みんな信じるかな?

…そうだ。龍がどうとか言ってたな。

「おぬしは龍じゃな」

「ブータンは龍の国じゃ」

何なんだ?龍ってのは。

知ってるよ。架空の生き物だ。ドラゴンボールに出てくるんだ。

カッコイイな、龍って。デザインのモチーフとして、カッコイイ。

「おぬしは龍じゃな」

僕、龍なのか?意味わかんねぇ。辰年ではないけどな。


…そんなこと考えながら歩いてたら、

もう昼だ。太陽は真上に来てる。

ヒマを潰すコツを覚えたよ。空腹を忘れるコツも覚えた。

とにかく何か、考えてりゃいいんだ。

何でもいい。何だっていい。悲しくなけりゃ、何だっていいんだ。

するとネタはいくらだってある。あと1000年くらいは歩けるぜ。

うん。やっぱり婆ちゃん、マカオから歩いてきたんだよ。

僕もけっこう歩いたぜ?婆ちゃんほどじゃないけど。

重たいバックパック背負って、我ながらよく歩いたよ。

ひょっとして、ブータンからも出ちゃったんじゃねぇの?

…え?マジ?

それもありうるな。距離感がぜんぜんわかんない。

ブータンとチベットの国境なんて、山の中だろ?

知らずに越えてても、おかしくはないよ。


3日目もかれこれ、3時間は歩いた。

ようやく、ようやく、村らしき場所にたどりついた!



『「おとぎの国」の歩き方』

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