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エピソード17 『ヒミツの図書館お姉さん♪』

私は、ひとしきり疑問が解決したので、

コピー用紙を抱えて、レノンさんを探した。

「おんやぁ?

 ずいぶん長いデートじゃったのう♪」

レノンさんは、イタズラにウインクをして見せた。

…どうやら、

このような展開になることを、

この人はお見通しだったらしい…(笑)


「もう!レノンさんのばかぁ!

 私ったら無意味にドギマギして、

 無意味にアブラ汗かいちゃったじゃないですかー!

 いい人ならいい人って、教えてくれれば良かったのに!!」

「ほっほっほ。そうかな?

 ワシが『主任は良い人じゃよ』と言ったら、

 古藤さんはそれを真に受けるのかな?それで良いんじゃろか?

 ワシにとって良い人であっても、

 女性や古藤さんにとっては良い人じゃないかもしれんし…」

「た、たしかに…。

 おしゃべりした今でも、結局よくわからない人だし…

 そういえば高桑さん、

 微妙に私に目を合わせてくれないんですけど、

 あれはなぜなんでしょう?私、あんまり好かれていないのかな?」

何か気まずいことがあるからかな?と聞くことはできなかった…(笑)

「ほぉ。それは、『斜視(しゃし)』ゆえじゃろ。しゃぁないことよ。」

「しゃし??何ですか?それは。」

「斜視を知らんか?

 まぁ近年は、斜視の人も少なくなったから、

 知らんでも無理はないかの。

 斜視というのは、目の病気というか障害というか、そういうもんじゃな。

 まっすぐ前を見ようとしても、左右どっちかの瞳がそっぽ向いてしまうんじゃ。

 じゃから、対面しとる人からすると、

 目をそらされてるようにも見えてしまう…。

 しょうがないことじゃよ。障害じゃからの。

 当人の意思でどうにかなることではないし、

 ましてや、当人が悪意を持ってやってることでは、まったくない。」

「そうなんですか…。かわいそうな人なんですね。」

「ほほほ。かわいそうな人かどうかは、わからんぞ?

 こりゃあくまでウワサにすぎんが、

 斜視の人というのは、宇宙人であるとかないとか…!?」

「宇宙人!?」

「ほっほっほ。本当かどうかは知らんぞ?

 でも、そのようなことを書いた本が、いくつもあるんじゃよ。

 斜視の人は、

 宇宙人かどうかはシランが、たしかに、地球人ばなれした秀才が多い。

 優秀すぎるのも不公平じゃから、

 斜視というハンデを背負っといたんじゃなかろうか?

 ワシはそんなふうに感じてるが。」



私は気を取り直して、

レノンさんのアシスタントとして、様々な業務をこなした。


レノンさんは、

「焦る」ということを一切しない人だった。

いつも、柔和な顔だった。

たとえ利用者の居ない場所でも、

その表情やスタンスは、崩れることがなかった。

私に対して、

何かを厳しく指摘したりすることも、無かった。

失敗しても、怒らなかった。

私の体が仕事を覚えるまで、辛抱強く待った。

「待つ」ということすら、しているふうではなかった。


私は、レノンさんに聞いてみた。

「どうしていつも、

 のほほんと仕事しているんですか?」

「そりゃあ?

 人生っていうのは、

 『死ぬまでのヒマ潰し』じゃからのう♪」

…それだけだった!



司書の仕事というのは、

大筋、私の思い描いていた通りの仕事だった。

とにかく、

利用者にあれやこれやと宣伝しなくて良いから、助かる♪

「ご一緒に、ポテトもいかがですか?」とか、

「新発売のアップルパイがオススメですよ」とか、

思ってもいないセリフをマニュアル化されるのは、

私には、苦しいのだ。

それに、

「売り上げが芳しくない!」と上司が怒鳴ったりすることも、無い♪

いつも、純粋に、

目の前の利用者さんに奉仕してあげれば良かったし、

しかるべき作業を、丁寧にやれば、良かった♪


中には、やや神経質なスタッフさんも居たけれど、

全体を見れば、おおむね、穏やかで優しい人ばかりだった♪

利用者にも、穏やかな人が多い。

本や手続きに不備があっても、

怒鳴り込むようなクレーマーは、ほとんど居なかった♪


私は、『お手伝い』にストレスを感じることが無く、

8時間立ち回っていても、大して疲労を感じなかった♪



私は決して、

全ての土日に来館したわけでは、なかった。

何か他に用事があれば、そちらを優先することが許された♪

それでも、

だいたい毎月、土日の3/4くらいは、ここに来ていた。

同年代の子たちと遊びにいくよりも、ずっと面白かった(笑)

平日もちょくちょく、

呼ばれてもいないのに顔を出して、

カートに積まれた本を棚に戻す作業などを、コッソリ行った。

スタッフは誰も、私の「おせっかい」を止めたりはしなかった。

私は、信頼してもらえているようだった。



『ヒミツの図書館お姉さん♪』

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