エピソード17
次に夢中になったのは、料理でした。
私は、それまでも、
最低限の炒め物とスープくらいは、作りました。
妻・翔子は、
私に、凝った料理はさっぱり伝授しませんでした。
何でもかんでも土鍋に放り込んで、
リゾットにしたり、パスタにしたりしました。
とにかく、
土鍋一つに、今日の食材を放り込んでしまうのです!
すると、
料理の手間は簡素化され、
食器洗いや後片付けも、圧倒的に楽になりました。
確かに、
炊飯器でご飯を炊き、圧力釜でシチューを煮込んだところで、
私たち一家は、
シチューの深皿の中にご飯を放り込んで、一緒に食べてしまうのです。
…であれば、
最初から、土鍋一つで「シチュー・リゾット」を作ってしまえば良いのです!
私は、元より、
食にこだわりの強いほうではなく、
土鍋1つ、どんぶり1つの食卓でも、何の不満もありません。
…不満どころか、
土鍋という代物は、「ジャパニーズ圧力釜」であったようで、
何でも土鍋で煮込んでしまうだけで、
食材は柔らかくなり、味は深く染み込みました。
少ない調味料でも、味がしっかり付いてくれるのです!
また、妻・翔子は、
調理法がシンプルである代わりに、
スパイスやハーブを、複雑に操りました。
体調によって、効果的なスパイスやハーブが異なり、
同じようなリゾットを作っても、
毎回微妙に、味や風味が変わりました。
四女・結衣は、私に、
ケーキの作り方を教えてくれました。
四女・結衣もまた、母親譲りなのか、
シンプルで美味しいケーキの作り方を、熟知していました。
糖分には、
もっぱら、メイプルシロップを好んでいるようでした。
メイプルシロップは、楓(かえで)の樹の樹液です。
上白糖やハチミツよりも、
カロリーが少なく、健康に良く、地球に優しいのだそうです。
『リストラ後の7回裏で…』