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エピソード17 『星空のハンモック』

エピソード17

「はぁあ…。」

私はリビングの窓辺で、ほおづえをつきながらためいきをついた。

「ハナちゃん。一緒にクッキー焼こうよ?」リナちゃんが私を誘う。

「ごめんね。今そういう気分じゃないんだ。」


寂しい。

「のり付けしない」ということを理解していたはずだったのに、

いざ男の人と深く交わり、その人が遠く届かない場所に離れてしまうと、

心にぽっかり穴が空いたような気分になる。

「ウフフ。そういう面でも安宿暮らしっていいんじゃない?

 素敵な男性かは別として、次から次へと新しい出会いがあって、ヒマが潰れるわ。」

麗子さんは、子供をなでるように優しく私を諭す。

たしかに、新しく人と出会って語り合うのは、

恋愛とはまた違ったトキメキがあって、おもしろい。



「麗子ちゃん。やっとこれたわぁ。」

来客だ!白髪の混じり始めた、麗子さんより一回り年上の女性だった。

「わー!ハルちゃん。わざわざありがとう。」麗子さんの知り合いらしい。

「はじめまして。ハナです。」私は立ち上がって、玄関に出ていく。

麗子さんが間に入って紹介してくれる。

「こちらはハルコちゃん。私のお友達なの。

 彼女、絵の先生をやってるのよ!」

「絵の先生!すごいですね!」

「ははは。あたしが教えられるのは、パステルだけやねんけどな。」

「パステル?」

「知らん?クレヨンみたいなやつやで。

 クレヨンよりもっと、繊細な使い方するけどな。

 間口が広くて奥が深いから、おもろいで。」

「ハナちゃん、絵の描き方、教えてもらったら?

 芸術に打ち込んでみたいって、こないだ言ってたでしょう?」

「え、いいんですか!?」

「ええよ。ヒマ人やしね。」


というわけで、

絵の先生から直々に、レクチャーを受けられることになっちゃった。

「ほんなら、まず何か、描いてみい?」

「え!いきなりそんなこと言われても…」

私は絵が得意ではないので、

自由に描けと言われれば言われるほど、

どうすればよいかわからなくなり、ためらってしまう。

「別に、パステルじゃなくてもええで?鉛筆でもクレヨンでも。」

「えーっと…

 描き方を、教えてもらえるんじゃないんですか?」

「はっはっは。技法なんてどうでもええねん。」

「えー!?」

「描くことにためらいがないなら、技法なんてどうでもええねん。

 勉強できる子は大勢おんねんけど、絵が苦手な子は多いねんな?

 なんでやと思う?

 絵は、決められた答えがないからやわ。

 それか、美術館みたいな絵描くんは、難しすぎるなぁ。

 あれが正解やと感じるけど、それがぜんぜん出来へん。

 それやから、自分の絵見せるのは恥ずかしいねん。やから苦手意識なんねんな。

 けど、技術がついてくると、できばえが良うなって、

 人に見せんのも恥ずかしなくなってくんねん。

 そしたら、ためらわずにどんどん描けんねん。

 どんどん絵描けんねん。どんどん絵楽しめんねん。

 技法は、絵描くの楽しめるようになるための、キッカケの1つに過ぎんねん。

 技法なくても絵描くの楽しめんなら、技法なんてどうでもええねん。

 絵描くの楽しいなら、勝手に技術もついてくるしな。

 誰かの技法と違っても、見栄えのいい絵は描けるんちゃう?それでええやん。

 あたしはあたしの知っとる技法を教えるけどな、

 それはアイデアのひとつに過ぎんねん。それが正しいってわけやない。」

深い…!!

「意味わかる?

 芸術って、技術のことやないねん。

 創造を楽しもうとする、メンタルのことやねん。

 技術にこだわりすぎると、芸術の真髄を見失うで。」


『星空のハンモック』

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