エピソード17 新しいお友達
「うわ!」
不意にミシェルは感嘆(かんたん)をあげた。
「光が爆発したわ!まぶたの裏に!」
「もういいわね。」アンジェリカは手を離した。
「リリルが、ミシェルのところに行くって言ってるわ。
うふふ。仲良くしてあげてね。」
「リリル!?
………………………。」
ミシェルはぽかんと口を開いて、何かに耳をすませている。
「ねぇ、お姉ちゃん、何があったの?」
キャロルがミシェルのすそを引っ張る。
「うふふふふ!お友達が増えたわ♪
ブルーベリーの妖精ですって!リリルちゃん!」
「えー!?ずるーい!
わたしには何も聞こえないよ!?」
「そうよ。リリルはミシェルの付き人ですもの。
あなたにはロッドがいるでしょう?」
「えー!女の子のほうがいいー!」
「あはははは!そんなこと言ったらロッドがかわいそうよ!」
「そうだけどぉー。
っていうか本当なの?本当にお姉ちゃん、妖精としゃべってるの?」
「そうね。こればっかりは、だれにもわからないことよね。
ミシェルも私もウソをついているのかもしれない。それはだれにもわからない。」
「そうよ!お芝居(しばい)してるのかも!?」
「でもね、キャロル?
あなたがロッドとしゃべってるのだって、それ本当なの?」
「本当よ!ロッドはここにいるわ!」
「そう。本当ね。あなたがロッドとおしゃべりしてるっていうこと、
ミシェルも私も疑わないわ。きっと真実だって、そう思うから。」
「そっか。それと同じなのね。」
「そうなの。ロッドの存在をクラスメイトに証明しようと思っても、できなかったでしょ?
そういうものなのよ。真実は本人にしかわからないの。
だから魔法を証明せよとか、魔法を見せろとか、
そういうのはナンセンスなのよ。
魔法使いたちっていうのは、
自分の魔法と寄りそいながら、ひっそりと暮らすしかないのよ。」
「ふうん。」
「ロッド、ごめんねぇ。」
キャロルはアンジェリカに裁縫道具を借りて、
不器用な手で、ちぎれかけの肩に針を通しはじめた。
2015/07/27 完筆
『ミシェル』
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