エピソード18
「…それであなた、
このまま、88箇所を巡り続けるの?」
「いや、わかんないなぁ。
何事も、『ゴールに着くこと』には、
大して価値を置いて無いから、
歩いてる最中に、何か面白い場所を見つけたら、
そこにしばらく留まるかも、しれないですよ。」
「あなたそれ、現実逃避じゃないの?」
「お遍路って、
ゴールに辿り着くかどうかは、大した問題じゃナイんですよ。
何かを悟っちゃったら、そこが、そのヒトのゴールなんですよ。
タブンね♪
なんでも、そうですよ?
本当に大切な答えっていうのは、
ゴールじゃなくて、その道すがらに、
コッソリ転がってるんスよ(笑)
だから僕は、
ヒーコラヒーコラ、険しい顔して歩くことは、しないんです。
険しい顔してると、周りを見る余裕が、無くなっちゃうでしょう?
人も、寄り付かなくなっちゃうし…。
ニコニコしてるか、
そうじゃなくても、穏やかにしてるほうが、
些細な物事に、気が付きやすいんですよ♪」
「…つまり、
『全てを手放して歩いている』っていう事実が、
あなたがもう、『お遍路で何かを悟ってしまった』
という証拠よね?」
「だから、
悟った人間は、『悟った』とは言わないんだってば(笑)」
「お財布は、持ってるの?」
「うん。
全財産は、あと1万ちょっとだけど(笑)」
「1万って…
銀行とかには?」
「ナイっすよ(笑)
…いや、5円くらい、残高残ってるかも(笑)
「それであなた、家に帰れるの!?
その喋り方だと、関東の子でしょう!?」
「うーん。帰れないと思う(笑)
別に、家に帰れなくても、いいから(笑)」
「親御さんに、勘当されたってこと?」
「いやいや!概ね仲良しですよ♪
別に、いつどこで死んでも構わないって思ってるから、
家に帰る費用を計算したりは、しないんスよ(笑)」
「…あきれたわ…!!
じゃぁ、どこかで働き口を見つけたり、するの?」
「うーん。
どっかで賃金労働をする可能性も、あるかもしんないけど、
出来れば、賃金労働は、避けたいなぁ。」
「どうして?
それだけの知恵と根性があったら、何でも出来るでしょう?」
「いやいや!
別に、怠けたいわけじゃ、ないっス(笑)
僕ね、
暇つぶし以外に、四国をさすらってる目的を挙げるとすれば、
『自給自足のエコビレッジ』みたいのを、
築きたいと思っているんスよ♪」
「あぁ、あなた、ロハスなの?」
「ロハスっていうのも、遠くは無いだろうけど…
郊外の新興住宅街みたいのじゃなくて、
もっとこう、
生活の全てを、お金を介入させずに循環させられるような…
フィンドホーンとか、知りません?」
「フィンドホン?聞いたこと無いわ!
…でも、
あなたが言ってることは、
なんとなーく、解ったわよ。
あなたみたいなこと考えてる人、
徳島のこの辺りは、割と、多いのよ!
…でも、
ヘンクツ爺さんみたいなのばっかりなのよねぇ…」
「そうなんスかー!?
何か、気の合う仲間が見つかれば、
長期滞在したりするかも、しれないっス。
あとは、
農業をやってみたいんだよなぁ。
田んぼね!
手作業で、田植えとか、稲刈りとか!」
「…あなた、変わった子ねぇ…
案外、ガテン系なわけ?」
「いや!
基本的に、インドアのもやしっ子ですよ(笑)
二十歳くらいの頃は、
プロミュージシャン目指して、音楽やってたし…」
「…へぇー!!
なんでもござれってわけ!?」
「ぜーんぶ、中途半端だけどね(笑)」
『お遍路さんの集まる喫茶店』
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