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エピソード19 『私の彼は有名人』

エピソード19

楽曲提供の仕事は、それなりの収入を、彼にもたらした。

楽曲の売り上げ具合から言えば、もしそれが印税計算なら、そうとうな額になったろう。

しかし、ゴーストというのは買い取り方式になるので、あまり割りはよくなかった。

追加の成果報酬を主張すれば、貰えたのかもしれない。

けれども彼は、そういうことをしなかった。したがらかなった。

「金銭的な成功は、別に望んでいないから」と、涼しい顔で言っていた。


そうして得た臨時収入で、彼は、音楽の機材を買い込んだ。

パソコンで打ち込みをするというのだ。レコーディングまで、自分で勉強するという。

普通、アコギ系のシンガーソングライターは、そこまでは自分でやらない。

打ち込みというのは、ピアノが上手じゃないと、まっとうに行えないからだ。

彼は、ピアノが上手なわけではない。

けれども、地道に勉強し、努力したがった。


彼は結局、歌を唄うだけでもなければ、作詞作曲をこなすだけでもない。

ギターも弾き、パーカッションもかじり、打ち込みもやり、録音もやり、

編集やマスタリングまで、自己完結した。

ホームページも自分で作ったし、CDのジャケットも、自分で手がけた。

こんなに多彩なミュージシャンは、彼以外に存在するのだろうか?

「全ての演奏を本人が行った」というようなCDは時々見かけるが、

録音やジャケットデザインまで自己完結した話は、聞いたことがない。

私は、彼の多彩さに見惚れるが、

それ以上に、その類まれなる向上心に、敬服してしまう。

彼は、その気になれば音楽だけで食べることも出来たはずだ。

でも彼は、普通の賃金労働も掛け持ちし続けた。

「どうして?ストレス溜まるし時間掛かるし、わずらわしいだけじゃない?」

と、私は尋ねる。

「社会性を身につけることも、人間として大切なことだから」

と、やはり涼しい顔で、言ってのけるのである。


『私の彼は有名人』

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