エピソード20
…ちなみに、あの時、
季節は、5月の末頃だったよ。
誕生日の直後だったから、良く覚えてんだ。
5月の夜中は、
まだ底冷えのする、肌寒い気候だったよ。
…最初のうちは良かったけど、
3時とか4時くらいには、
窓も結露し始めて、寒くなっちゃったなぁ。
ハルオは堪らず、
エアコンのスイッチを入れたよ。
それで、暖かくはなったんだけどさぁ、
車の前席でエアコン掛けてると、エラく乾燥するだろう?
僕なんか、鼻炎持ちで、
いっつも口をぽっかり開けながら寝るから、
口も鼻もノドも、カラカラさ!
結局その晩、ロクに眠れたモンじゃ無かったよ!
でもさぁ、僕は別に、
ハルオを責めもしないし、不満をブー垂れたりも、しないのさ。
なにしろ、
「冒険」ってのは、「非・日常」と、同義語なんだ。
「冒険」には、多少の不都合は、付きモンなのさ♪
ロクに眠れやしなくたって、
1日何にも食べらんなくたって、
酔ってゲーゲー吐いたって、
それでも尚、繰り出したい魅力が、
「冒険」には、あるんだよ♪
眠ったんだか、眠ってナイんだか…
朝の6時頃には、
座席の窮屈さに堪りかねて、
僕は、外に飛び出しちゃったよ。
お腹が減ったから、
また、菓子パンか何かと、
500mlパックのミルクコーヒーでも、買ったんだ。
「多分」、ね(笑)
つられてハルオも起き出して、
2人でまずは、腹ごしらえをしたよ。
胃が消化を終えるのも待たずに、
僕らは再び、行き止まりの奥に、進んでいった。
今度は、車を、
コンビニに置きっぱなしのままにして、さ。
…あの道は、フツウの住宅地だから、
路肩に車を停めておくと、メイワクになっちゃうだろう?
…そう、
「冒険」をするヤツらってのは、
割りに、マナーがイイんだよ♪
「ルール」は守らなくても、「マナー」は、守るんだ。
「立入り禁止」って書いてあっても、
躊躇なく奥まで進んでいくんだけど、
ペットボトルを散らかしてきたりは、しないんだよ。
そのヘンが、
「ヤンキー」とか「不良」とかとの、違いだなぁ。
ヤツらは、「他人にメイワク掛けること」を、楽しんでるからさぁ。
ストレス溜まってんだよ。多分。
路地を2分も歩けば、
昨夜とオンナジ場所に、行き着いた。
でも、真夜中のそれとは、ずいぶん趣が違ったよ。
昨夜は気付かなかったけど、
入り口のところに、模造紙くらいのサイズの看板が掛かってた。
およそ、お巡りさんが説明してくれたのと同じことが、
書かれていたなぁ。
「自然保護のために誰かが買い取った」
とかナントカ、そういうことが、さ。
『トトロの森のけもの道』