エピソード22 『真理の森へ』
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- 2023年3月19日
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エピソード22
まだ1週間しか経っていないのに、
私が学んだことは星の数ほどたくさんありました。
トゥーリが言っていたみたいに、
大学だけでなく、あらゆる全てが私の学校であり、先生なのです。
新鮮なことだらけで、毎日がメチャクチャ面白い!
視覚も味覚も聴覚も、刺激されまくってフル回転です。
全身の細胞が、すっかり入れ変わっちゃったみたい。
そこまでの新鮮さは、1ヶ月と続かなかったけど、
それでも毎日のように、何かしら新しい発見が続きます。
…ひょっとしたら、「留学」である必要は無かったのかもしれない。
教室で学んだことなんて、全体のうちの1割にも満たないのだから。
とにかく、海外に長期滞在するということに、意味があったんだと思う。
そしてそれがフィンランドであったから、こんなにも学びが多いのです。
フィンランドの全てが良いかと言ったら、そうとも限りません。
まず何よりも、冬の寒さが地獄!
10月にはもう寒くなりはじめて、自転車通学も断念してしまった。
真冬にもなれば、気温は0度を超えません。-20度なんてのもザラ(笑)
気温の低下とともに、極夜(白夜の反対)もどんどん進んでいき、
気分はどうしても、憂鬱になってきます。これは、フィンランド人でさえ仕方ないんだそうな。
それと、私が耐えられないのは、
フィンランド人の飲酒量!
普段はあんまりお酒を飲まないのに、
何か祝日やイベントとなると、突然、泥酔するほど飲みまくるのです。
その辺は日本人に似て、ストレスを溜め込みすぎているんでしょうか?
幸い、カティもアンティもあまりお酒を飲まないので、
出入りする場所さえ気をつければ、あまりお酒で不愉快な目に遭うことは無いけれど。
寒さと言えば、とても驚いたことがあります。
最高気温がマイナス10度にもならない、ある寒い日のことでした。
私は、学校が昼過ぎに終わって、まっすぐ家に帰っていました。
すると、近所の家の庭先に、
ベビーカーに乗った赤ちゃんが、放置されているではありませんか!
育児放棄!?それとも虐待!?
私は青ざめて、とっさにその家のインターホンを連打しました。
インターホン越しに、「赤ちゃんが出ていますよ!」と叫びましたが、
どうも通じません。相手はお婆ちゃんで、英語が得意ではないようです。
お婆ちゃんは外に出てきて、私は身振り手振りで伝えますが、
それでもどうにも、伝わりません。
赤ちゃんが放置されているのを間近で見ても、それでもノー天気なのですから、
私の頭はクラクラします。
私はさすがに虐待を疑い、思い切って警察に通報しました。
お巡りさんはすぐに駆けつけてくれましたが、
お巡りさんもやはり、放り出された赤ちゃんを見ても、平然としています。
お巡りさんまで狂っているのか!?と私は青ざめました。
…が、よくよく話を聞いてみると、
フィンランドでは、赤ちゃんの健康のために敢えて、
ベビーカーに乗せた赤ちゃんを、真冬の屋外でお昼寝させるのだとか!
私はあまりにカルチャーショックで、
冷静に説明されてもなお、しばらくは理解ができませんでした…。
もちろん、しっかりと防寒具を着せはするのですが、
それにしたって凍るような寒さだし、雪の日さえやるので驚きます。
家の中は暖房によって空気が汚れているので、
外の新鮮な空気の中で昼寝したほうが健康に良く、また良く眠るんだとか。
フィンランドの赤ちゃんや子供たちは、
スキーウェアのような「つなぎ」型の防寒具を愛用します。
保育園の庭先などで、並んでお昼寝している様子を見ると、
色とりどりのマトリョーシカが並んでいるみたいで、とても可愛らしいです。
『真理の森へ』



