エピソード23 『沖縄クロスロード』
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- 2023年3月13日
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エピソード23
待ちわびた啓示は降りたけど、ユカたちは動かなかった。
動けなかった。どこに行けばいいか、よくわかんないんだもん。
今帰仁に行けって言われたって、ここはすでに今帰仁だ。
ユカは、イジけた子供みたいに棒切れで地面をぐりぐりいじりながら、
啓示の意味を考えていた。
他にも今帰仁って場所があるんだろうか?
こんな珍しい地名、他にあるとは思えないけど。
「今帰仁に行けって、どうすりゃいいのよ?」
ユカは限界を感じて、2人に意見を求めた。
ヒヨリは眠そうだ。半ばどうでもいいみたいだ。
マリが自信無さげに口を開く。
「あのさ?
『今帰仁に行け』じゃなくて、『次の行動は今帰仁』って言ってたよね?」
それ、日本語的にちょっとヘンだよ。
でも、神様が文法間違えるかな?そうは思えない。
ってことはさ?
文法どおりに考えるんであれば、
『今帰仁』って単語は、場所じゃなくて、行動そのものを表してるってことかも。」
「
…つまり?」ユカにはいまいち、飲み込めない。
「つまりさ、
『今帰仁に行く』んじゃなくて、『今帰仁する』ってことなんだよ。」
「へ?『今帰仁する』って、どういう意味???」
「それは、私にもわからないけど…」
ユカは、棒切れで地面に「今帰仁」と書いてみた。
大きい文字、小さい文字、何回も書いた。
ひらがなでも書いたし、カタカナでも書いた。
丸文字で書き、レタリングもしてみた。レタリングは得意だ。
…?
ナキジンって、どうして今帰仁という漢字なんだろう?
沖縄の地名はどれもヘンテコで、それは琉球の言葉だからで、
日本語漢字を無理やり当ててるだけだろうけど。
でも、意味があるのかもしれない。子供の名前だって、意味を込めて付ける。
ましてや沖縄は霊的土壌の強い文化なんでしょう?
何か意味がって、「今帰仁」という字を当てたのかもしれないよ。
今帰仁
今帰仁
今帰仁…
今帰仁
今帰仁
今帰仁…
何もわからない…
仁帰今
帰今仁
今仁帰…
今度は並べ替えてみた。もうヤケクソだ(笑)
でも、古語では、字を並べ替えて読んだりするよね。
仁今帰
今帰仁
今仁帰…
…今仁帰?
今、仁義に帰る!
やっと文法が成立した!!
「今帰仁する」っていうのは、「今、仁義に帰る」ってことだよ!
…でも、仁義ってどこ?どこに帰ればいいの??
そもそも、仁義ってどういう意味だっけ?ヤクザのこと?
「ねぇ?仁義ってどういう意味だっけ?」
ユカは早口でマリに尋ねる。ヒヨリに尋ねてもわかりっこない。
「仁義?
仁義って、『義理を果たす』とか『恩を返す』って意味じゃない?」
「義理を果たす…かぁ。」
ユカたち何か、恩返ししてないことあったっけ?
…いっぱいある気がする。
18年の人生を振り返れば、恩返ししそびれてること、無数にある(笑)
でも、そんな昔のこととは思えないし、そんなに遠い人じゃないはずだよ。
沖縄に来てからのことだよね、きっと。
義理
恩返し
義理
恩返し
義理
恩返し…
思い出した!
『沖縄クロスロード』