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エピソード24 『お遍路さんの集まる喫茶店』

エピソード24

私には、

ムカイくんに引き合わせてみたい知人のアテが、幾つもありました。


彼らがふらりと来店するたびに、

ムカイくんを、店に呼び寄せました。

たいてい彼は、

チユキちゃんの家の敷地の中で、

ニループを先生にして、原始生活のあれこれを楽しんでいたので、

呼べばすぐに、飛んで来ました。



私の店のお得意さんには、

エキスパートや人格者が、大勢居ました。

その誰に合わせても、

ムカイくんは、互角に語り合いました。

私にもよくわからない、難しい、専門的な話を、

ケラケラと笑いながら、楽しそうに、交わすのです。

そして、


ムカイくんが帰ったあと、彼らは、口を揃えて、言うのです。

「まいったわ!降参やぁ。」



ムカイくんは、別に、

専門知識が豊富なわけでは、無いのです。

しかし、

何の話題をしてみても、

その分野の「核心」を、突けてしまうのでした。


「…つまり、

 要は、こういうことでしょう?」

と、「要点を察する」ことが、非常に巧みなのです。



彼は、どうやら、

何らかの「法則」を熟知しているようでした。

「核心に達する法則」です。


私が、少し、感じ取れたのは、

「とにかく、常人とは違うことをやる。

 とにかく、常人とは正反対の視点で見る。」

というようなことです。

「青い鳥的パラドックス」とでも、言いましょうか。



私は、彼の影響で、

こうした、「常人とは正反対の視点で見る能力」が、

増してきたように感じます。


いったい、

このスキルの対価というのは、何万円なのでしょうか?

年間100万、計400万円払えば、

どこの大学教授も、教えてくれるのでしょうか?

私は一体、

何杯の野菜炒め定食を、お肉を抜いて差し出せば良いのでしょう?

私は一体、

何杯のアイスコーヒーを、ミルク多めで淹れれば良いのでしょう?


私は、

この人生では、とても払い切れないと感じます。


それでも彼は、

「おばさん!草抜き、無いの?」

と、言うのです。



私は、

彼が、「お金の介入しない共同体を築きたい!」

と願っていた意味が、なんとなく、解ったような気がしました。


「無形の宝物」を、沢山シェアしてくれる人間というのが、

世の中には、確かに、居ます。

しかし、

彼らがシェアしてくれる宝物は、

資本主義社会の物差しで言うと、「0円・無価値」なのです。


すると、

彼は、イチ早く、

資本主義経済の限界・不毛さを、悟っているのです。

そして、

「自らアクションを起こしている」のです!!

「自ら率先して、手本を見せている」のです!!



しかし、

まことに残念ながら、

今の日本社会が、彼の思考・振る舞いに追いつくには、

まだまだ、途方も無い時間が、掛かりそうです…


徳島には、

彼に「近い」考えで、エコビレッジ的なことに取り組んでいる人たちが、

結構、居ます。

しかし、

そんな彼らでもまだ、

「ムカイくんの思考」とは、合致しないでしょう。


エコビレッジ的なものに取り組む方々は、

あくまで、「お金を介入させずに、物々交換を行おう」と、考えています。

まだまだ、

「自分が損することへの恐れ」を、手放せずに居るのが、解ります。



しかし、

ムカイくんは、決定的に、違うのです!

「物々交換」を提唱しているのではなく、

「ただ、与え続けること」を、提唱しているのです。

いや、

「心の底から楽しみながら、与え続けること」

を、提唱しているのです。


しかし、

そのようなビレッジを作るには、

そのビレッジの住人のみんなが、

彼と同じように、

心底楽しみながら、炎天下を歩き続けたり、草刈りをしたり、

出来るようになる必要が、あるでしょう。


…どう考えても、

10年や20年では、為し得られそうも、ありません…。



また、彼は、

「枯渇すること」を、恐れません。

自分が一文無しになっても、尚、与え続ける人間なのです。

お金にせよ、体力にせよ、何にせよ、

出し惜しみせず、温存せず、与え続けるのです。



彼は、どうやら、

時代を間違えて、生まれてきてしまったようです。


…いや、

彼お得意の、「青い鳥的パラドックス」を用いて考えるならば、

「彼以外の70億人が、時代を間違えて生きている」

のかも、しれません。


「2012年という年には、千年王国が誕生する」

などという伝承が、世界各地に、あります。

彼一人、

千年王国の準備が整っていて、

他の70億人は、準備が停滞しているのです。



…とは言え、

私は、世界の狭い人間です。

もしかしたら、九州や東北や、ベネズエラ辺りには、

彼の思考にピッタリ合致する人が、幾人も居るのかも、しれません。


とりあえず、

私が感じる基準としては、

「手ぶら同然で、死をも恐れず、お遍路歩きが出来ること」

が、彼と面会する、最低条件のような気がします。


…さて、皆さん、

九州や東北や、ベネズエラ辺りには、

「手ぶら同然で、死をも恐れず、お遍路歩き出来る人間」

が、幾人も、居そうですか?


であれば、

ムカイくんが、そのような千手観音と上手く落ち合えることを、

心から、心から、願っています。



プロローグ

…なんだか、

ムカイくんと生き別れてしまったかのような感傷になりましたが、

全く持って、その通りなのです。



彼は、9月の半ば頃、

チユキちゃんの田んぼの、「地獄の手作業稲刈り」を終えると、

刈ったおコメの味を確かめる暇もなく、

この町を旅立って行きました。

…つまり、

彼の稲刈りの苦労は、全く報われていないのですよ!?


それでも尚、

何か事情があるのか、秋風に呼ばれたのか、

とにかく、私たちの前から、消えてしまったのです。



恐らく、彼は、

こんなことばかり、あちこちで繰り返しているのでしょう。


努力が実る頃に、

その果実の味を享受する直前に、旅立ってしまうのです。

ただただ、与え続けながら、生きているのです。


このような人間が、本当に、居るのです。



『お遍路さんの集まる喫茶店』


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