エピソード24 『首長の村の掟 -真実の物語-』
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- 2023年3月11日
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陽の暮れたカレンの村に、話を戻そう。
食事がラフに出来上がると、
今度は、集落の片隅に、小さな焚き火がしつらえられた。
その火で最後の仕上げをし、
そのまま、ミニ・キャンプファイヤーさながら、小さな宴が始まった。
どんな食事だったかは、思い出せない。
煮込みスープのようなものは、あったと思う。
思い出せるのは、
火を囲んで、何曲も、弾き語りをしたことだ。
ゆらめく火の向こうから、
今朝出会ったばかりの仲間たちが、僕の顔をじーっと見ていたことだ。
「思わぬオプションが付いて、私たちはハッピーだ」
そんなふうに言われると、僕だって、ハッピーだ!
歌声を聞き付けて、
集落の大人子どもが数人、火のそばにやってきた。
不快そうなら、すぐに止めようと思ったが、
どうやら、興味津々に、喜んでいるようだった。
お金以外の方法で、彼らに恩返し出来たのなら、嬉しい。
お金以外の方法で、彼らの心に入って行けたのなら、嬉しい。
僕らのガイドも、ギターには心得があるらしく、
「貸してくれ!」というので、手渡した。
酒を飲んだわけでも無いのに、
彼はずいぶんと、陽気になって、唄っていた。
僕らのメンバーには、穏やかな人が多く、
ガイドの彼以外に、ギャーギャー騒ぐような人は、居なかった。
宴は、9時には幕を閉じた。
ロッジに戻ると、
他のツアー・グループの人たちは、もう寝ていた。
どこで食事を取っていたのか、わからない。
互いの姿が見えない場所に、散っていたのだろう。
そして、ギターなど無いグループは、
もっと早々に、お開きになったのだろう。
皆、よく汗をかいたはずだが、
誰も、シャワーを浴びる気配は無かった。
華奢で繊細そうな女性も、多かったが、
こういう図太さも、持ち併せているらしい。
日本人の女の子たちも、同様だ。
「普段は清潔に努めるが、いざとなれば、シャワーも我慢する」
こういう二極性、又はバランス感覚のある人間は、魅力的だ♪
…恋愛の話ではなく、人間的魅力の話である。
ロッジは、男性部屋も女性部屋も、無い。
今日出会ったばかりの男女が、テキトウに雑魚寝である。
全く交流もしていない、余所のグループの異性が、隣にいることも、ある。
誰も、文句を言ったりは、しない。
このような環境と解っていて、ツアーに参加しているのだから。
…「異性と添い寝したい」という意味では、無いよ?
気にしないで居られる人たち、ばかりなのだ。
また、
質素な敷布団と、ゴワついた毛布しか与えられなかったが、
誰も、文句も言わず、眠りに落ちていった。
枕など無かったが、
それぞれ、
自分の荷物を頭に敷くなり、工夫していた。
ちなみに、
ロッジには、電灯が無い。
真っ暗の中、懐中電灯の明かりだけで、ガサゴソ身支度をした。
なにしろ、この村には、
電気が通っていないのだ。
これだこれだ!
こういう場所に訪れたかったのだ!
『首長の村の掟 -真実の物語-』