エピソード25 『全ての子供に教育を』
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- 2023年3月15日
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エピソード25
しかし、
俺の恍惚は、24時間と続かなかった…
翌朝9時、学校に行って、愕然とした。
誰も、登校していないのだ。
いったい何が起きているのか、
俺にはさっぱり、理解ができなかった。
とにかく、目の前の広く新しい教室には、誰一人、居ないのだ。
俺は、学校を出て、村の中心に戻ってみた。
子供たちは、
方々の家の軒下で、一昨日までと同じように遊んでいる…
俺は思わず、そのうちの1組に駆け寄っていく。
俺に気付いた子供は、無邪気に抱きついてきた。
学校をサボって気まずいとか、そういう後ろめたさは微塵も無いらしい…
「学校は?行こうよ。」
と、通じもしない日本語で話し掛けてみたが、やっぱり通じなかった。
他のグループにも、駆け寄ってみた。
しかしやはり、判を押したように同じリアクションしか返ってこなかった。
俺は、あてもなく学校に戻ることにした。
すると、入り口のところに、ちょうどプーマがやってきていた。
4~5歳くらいの男の子を連れている。
俺は、プーマに声を掛ける。
「どうした?」
「どうしたって、それはオレのセリフだよ(笑)
タクシー、キミ、2日目にしてもうホリデー?」
「ホリデーじゃないよ!俺は9時に来たさ。
子供たちが誰も来ないから、今、様子を見にいってきたんだ。
プーマ、そういう君はどうしたの?誰?その子。」
「この子、タクシーの授業を受けたいっていうんだよ。
まだ5歳だから小学生じゃないけど、キミなら受け入れてくれると思ってさ。」
「たった1人…」
俺は、隠しようもなくうなだれた。
授業どころの騒ぎではないので、その5歳の子には帰ってもらうことにした。
俺とプーマは、教室の中に入り、机に仰向けに寝転がる。
俺は、プーマに問いかける。
「なんで誰も学校に来てくれないんだろう?
せっかく俺、死ぬほど頑張って学校建てたのに…」
「まぁ、大方、予想はついてたよ。」
プーマは、気まずそうに苦笑いする。
そして、続ける。
「ねぇ、タクシー、
なんで勉強を強制しようとするの?」
「そりゃ、幸せになってもらいたいからだよ。」
「勉強なんかしなくても、子供たち、幸せそうだぜ?」
「子供たちの知らない幸せが、勉強をすれば手に入るよ。」
「国語なんか勉強しなくても、子供たち、まっとうに喋れるぜ?」
「でも…」
と言い掛けて、俺の脳裏がまぶしくフラッシュした。
「!?」
デジャブを感じた。既視感だ。
何だっけ?これ。
以前にも体験したことがあるような、ないような…
『全ての子供に教育を』



