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エピソード27 『沖縄クロスロード』

エピソード27

翌日もまた、8時頃に目が覚めた。

なぜかしら?目覚ましかけてないのに、

この旅では連日、8時前後に目が覚める。


あぁあ、今日はもう帰らなくちゃ。

親には2泊3日って言ってあるから、あんまり伸ばすと心配かける。

あぁあ、まだ帰りたくない。

でもズルズルいくとマズいので、朝のうちに飛行機を予約することにした。

午後イチの便が、なんとか取れた。

あぁあ、これでもう、延泊はナシだ。



ユカはやっぱり、海をゆっくり眺めたかった。

「時間を気にせず、ただただたボーっと綺麗な海を眺める」というのが、

小さい頃からのささやかな夢だった。

そしておあつらえむきのビーチが、ここにはあった。


でも、リビングに残ってもいたかった。信悟さんともっとおしゃべりしたい。

2人きりのデートじゃなくていいから。いや、2人きりじゃないほうがいい。

男の人に慣れてないから、2人きりじゃうまく話せなくなっちゃう。


ユカは思い切って、信悟さんにお願いしてみた。

「信悟さん。一緒に海を眺めませんか?」

信悟さんは、ひとつ返事でOKしてくれた。



ユカたちは、4人でビーチに出た。

ヒヨリはまた、1人ハシャいで波と戯れにいった。

ヒヨリがビキニスカートをセクシーに揺らしていても、

ここにはナンパしてくるエグザイルはいなかった。こういうビーチがいいよね。やっぱ。


信悟さんは、特等席の木陰に、ユカたちを案内してくれた。

ここからなら、ヒヨリの様子も見える。



喋りたいことはたくさんあった。

でも、何から話せばいいのか、さっぱりわからなかった。


沈黙の理由を、マリはなんとなく察しているようだった。

この子はユカのことをよく理解してくれてる。

「とりあえず、一昨日の大冒険のことでも聞かせてあげたら?」


そうだ!それはナイスアイデア。

ユカは、不思議なお告げや真っ暗トンネルや優しい沖縄たちについて、

一生懸命話して聞かせた。

「楽しかった!」

「優しかった!」

「感動した!」

語彙の乏しいユカは、そればっかり言ってた。



「…あぁあ、また早く沖縄旅行に来たいなぁ。」

それこそが、話の結論だ。

でも信悟さんは、意外なコトを言う。

「あはははは!

 沖縄旅行が好きでたまらないなら、

 沖縄旅行なんてしないほうがイイよ。」


「え?どういうこと??」

「『沖縄を旅行する』んじゃなくて、『沖縄に住んじゃったほうがイイ』さ。

 2泊3日で沖縄旅行したって、大して幸せにはなれないよ。」

「そう?ハッピーなこと盛りだくさんだよ?」

「でもさ?その3日間がハッピーであればあるほど、

 東京に帰ったときの虚しさってのは、倍増するワケさ。

 オレも昔通った道だから、よくわかる。

 チーフに『ネクタイをちゃんと締めなさい!』って怒られるたんびに、

 『はぁ、沖縄はもっと気楽なのに…』ってウンザリするのさ。

 1年のうち362日も、そんな東京的文化で暮らしてて、幸せでいられるかな?

 沖縄より高層マンションを愛するようなヒトは、それが幸せなんだろうけどさ。

 オレは違う。キミも違う。そうでしょ?

 …あ、そうだ!グッドタイミングだよ!」


「え、何が??」

「ヘルパーのワカちゃん。3月いっぱいで任期満了なんだ。今日31日でしょ。

 明日からの住み込みスタッフまだ決まってないんだけど、

 ユカちゃん、やる?

 それを足がかりに、こっちでバイト見つけたりアパート見つけたりすれば、

 けっこうカンタンに、沖縄移住できちゃうと思うよ。」

「えー!

 …えー!?

 …どうしよう??

 嬉しいけど…どうしよう…??」

チャンスだし嬉しいけど、

その反面、色んなことが気がかりになってしまった。

4月8日からは専門学校に入学だよ?

いきなりバイト辞めたらチーフに怒られるよ?

ユカの貯金、12万しかないよ?

第一、親に何て言う?


「でも、ユカ、学校いかなきゃ。

 手に職就けなきゃ就職できないし、貯金もしなきゃいけないし…」

「ユカちゃん、就職したいの?正社員になりたいの?」

「よくわかんないけど、

 正社員目指すのが普通でしょ?

 貯金して結婚して生活安定したら、一人前の大人でしょ?」

「あははは!逆だよ!

 『自分に自信のない人間』ってのが、安定を求めるんだよ。

 それに、虚勢を張って、社会や異性に認めてもらいたがる。

 東京にマイホーム建てたりするヤツらは、そういうヤツらさ。キミのチーフとかさ?

 沖縄に来る連中は、その逆だよ。

 どこででも食っていける自信があるから、平凡な人生は選ばない。

 色んなことできるけど、かといってそれを自慢したいとも思わない。

 100万稼ぐ能力があっても、10万しか稼がないで、それで静かに暮らすのさ。

 本当に立派な大人なんて、東京にも大阪にも居やしないよ。沖縄人はそれを知ってる。

 

 …まぁでも、キミの言うことも半分は当たってるかもね。

 まだ18でしょ?高校卒業したばっかでしょ?

 少しはチーフみたいな人にシゴかれたほうが良いと思うし、

 専門学校か何かで手に職付けるの、良いと思う。

 定住する前に、いろいろ遊んだほうが良いと思うし。」


「でも、ホントにそれでいいのかな?

 せっかくのチャンスなのに、

 今帰っちゃっていいのかな?

 今度沖縄に来たときには、

 ここの住み込みスタッフの枠、埋まっちゃってるかもしれないよ?」

「そうだね。そうかもしれないよ。

 そもそも、この宿が潰れてるかもしれないし(笑)

 でも大丈夫だよ。キミはコンパスを手にしたから。

 十代の多感な時期に…東京に染まりきる前に…沖縄を垣間見たのは、正解だよ。

 おかげでキミは、

 人生の分岐点が何であるか、若くして気付けたもんね。

 『東京的な文化の中に幸せは無い』って確信できたなら、幸せはもう遠くない。

 たとえこの宿のスタッフ枠が空いてなくても、この宿がなくなってても、

 キミはどうにでもなるよ。

 ドミに抵抗ないんだろう?

 それなら、ドミ宿をあたれば月3万くらいの家賃で沖縄暮らしできるよ。

 それを足がかりに、バイト探したりすりゃいいさ。カンタンに移住できる。

 それで、キミがこの島の人たちに優しくしてもらったように、

 周りに優しくしながら、ニコニコ暮らせばいいさ♪」



しばらく、沈黙が続いた。

ヒヨリの様子を眺めながら、

そして、肝心なことを思い出した。

「あー!忘れるところだった!

 ユカたちまだ、信悟さんに恩返し済んでないよ!

 そのためにニライカナイに戻ってきたのに…!!」

「あはははは!恩返しなんて要らないってば。」

「でも!そういうわけにはいかないよ!!」


「じゃぁ、こういうのはどう?

 キミがオレから受けた恩は、

 いつかキミが沖縄に移住したときに、

 他の誰かに注いでよ。旅行者か移住希望者か、誰でもいいからさ。

 ペイ・フォワードってやつだ。」

「ペイ・フォワード?」

「そう。そういう映画が昔あったんだ。東京帰ったら、借りて観るといいよ。

 ペイ・フォワード。『恩の先送り』って意味だよ。

 代々そんなふうにして、沖縄って土地は、

 優しい気質を受け継いできたんだろうさ。

 恩なんて、誰に返したっていいんだ。誰に返すかは問題じゃないんだよ。

 とにかく、自分が受けた恩よりもたくさんのモノを、他の誰かに注げばいいのさ。

 そしたら世の中は、優しくなる。」


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