エピソード28
- ・
- 2023年1月31日
- 読了時間: 3分
僕は、7時45分には、待ち合わせ場所に着いた。
タフリール広場の例の11叉路には、
世界中の「どーでもイイ人たち」であふれ返っていたけれど、
ダニーの姿だけは、無かった…
8時になっても、8時30分になっても、
ダニーは現れなかった…
いちいちドラマが起こるんだよ。
なぜか知らんけど、旅ってのは、
いちいちドラマが起こるんだ。
彼の性格からして、
待ち合わせの時間に10分でも遅れるような気質とは、思えなかった。
事故や病気、壮大な冷やかし…
様々な理由を考えて、不安にもなった。
ただでさえ、
タフリール広場の尋常じゃナイ排気ガス臭さは、
ヒトを不愉快にさせ、気落ちさせるモンさ。
それでも僕は、待ち続けた。
それが、
彼がたった一晩の間に積み上げた、「徳」のようなモノだろうさ。
肉を食べない食生活、食事の前の食物への感謝、
仏のような笑み、穏やかな振る舞い、
音楽の好み、嗅ぎ分ける感性…
そうした彼の一挙手一投足が、
僕を辛抱強く待たせる要因だった。
「電話で状況確認しないの?」
って、思ったかい?
僕は、海外放浪にはケータイを持っていかないことにしてるんだ。
…持っていくとしても、
カメラとしてのみ使うか、MP3プレイヤーとしてのみ使うか、それだけさ。
いつでもすぐに誰かに助けを呼べてしまう、ケータイってモノは、
海外放浪を、著しくツマラナイものにしちゃうんだよ。
ヒトは、頼れるヒトのアテがあると、
そのヒトにばっかり、頼ろうとする性質がある。
たとえば、
女の子が2人で旅をしていると、
他の旅行者たちと交流しようとはせず、
延々と、2人でしゃべり続けていたりする…。
たとえば、
海外保険にたっぷり掛けてきたヒトは、
何かあればすぐに、
現地の日本人スタッフに泣きついてしまう…。
そういう、「月並みな対処」をしてしまうと、
「思いがけないドラマ」の起こるスペースを、
ぜーーんぶ、台無しにしてしまうんだよ(笑)
すると、とても味気ナイ旅にしか、ならないのさ。
…モチロン、
「通話料や通信料がバカ高いから」という理由も、有るんだけれど、
たとえ僕が億万長者であっても、
海外放浪にケータイは持っていかないだろうなぁ。
オンナジような理屈で考えると、
小さな子どもにケータイを持たせるのは、
あんまり賢くナイと思うよ?
たとえ、
塾で忙しかろうと、親としか通信出来ない機種だろうと、さ。
そういう子どもは、
困ったことがあったときには、「ママに泣き付く」という発想しか、
出てこない子になっちゃうんだよ(笑)
…それで、誰が困ると思う?
いつでも何でも、子どもがママに泣きつき続けるんだから、
結局、ママが一番、困ることになるんだよ(笑)
そういう子は、
25歳になって、彼氏と同棲していたって、
「ママー!ゴキブリー!!」
って、電話で泣きついてくるんだよ(笑)
でも、それは、
このピンク・ギャルのせいじゃナイのさ!
親御さんが、わが子を甘やかし過ぎた結果に過ぎないんだよ(笑)
すると、
「ママが困らないために、子どもにケータイを持たせよう」
っていう思考回路は、本末転倒で逆効果なんじゃない?
…ん?子どもにケータイを持たせるタイミング?
それは、
子どもがアルバイトをして、
自分で通信料や機種代を払えるようになってからじゃないかな?
そうなったら、
課金制のゲームだろうが、アダルト・サイトだろうが、
何の規制も掛けずに、スキにやらせればイイさ(笑)
自分で汗水流して働いたお金が、そうした悪徳商売に吸い込まれていくのを見たら、
彼らは、親が何も怒ったりしなくても、
自分で自分を、セーブするようになるよ。
自制心が身に付くし、計画力が身に付くだろうさ。
ムダなおしゃべり通話も、勝手にセーブするようになるよ♪
『導かれし者たち』