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エピソード2 『ゆずと林檎』

エピソード2

別離と言うと、

オレとアイツの仲は、険悪なのだろうか?


否!そんなことは無い!

結成から10年以上経つけど、

いまだにしょっちゅう、

2人で酒を飲みながら、エロ話などで盛り上がっている。

真面目な話も、出来るし。



オレが別離を考えている理由は、

「このまま活動を続けても、成長出来ない」と感じるからだ。



人は大人になると、

まずは、生活の安定を求めて躍起になる。

で、それをある程度確保したとき、

道のりが2つに枝分かれする。



1つの道は、

「不安定な冒険」に、旅立っていく人たち。

これは、

文字通り、放浪のようなものであることもあるし、

「他業種にチャレンジする」といった意味も、含む。

オレは、どちらかと言えば、

そうやって、未知なることにチャレンジし続ける人間に、憧れる。


もう1つの道は、

手に入れた安定に、しがみ付き、収まり続けてしまう人たち。

ロクに働きもしないで、虚勢ばかり張っている、

実業家のような人たちだ。


「ロクに働きもしないで、虚勢ばかり張っている、

 実業家のような人たち」

を音楽業界に当てはめてみると、

年に1枚か2枚しかシングルをリリースせず、

2~3年に一度しかアルバムをリリースしないのに、

虚勢を張っている、大御所バンドだ。

彼らは、「昔取った杵柄」で、生きている。

彼らのクオリティは、たいてい落ちている。

それに、

お腹のビールっ腹が隠せなくなってきている。


どんな業種にしたって、

ビールっ腹になり始めたら、

安定志向に陥ってしまった証拠だ。

つまり、

ロクに働きもしないで、虚勢ばかり張っているのだ。



海外放浪をするビールっ腹の旅人なんて、見たことがない。

彼らはいつも、

新しいスリルと対峙しているし、

ぜいたくにもご馳走にも、目が眩んでいないからだ。


オレは、実は、

そういう海外放浪者に憧れている。

1年とか、そういう長いスパンで、

見知らぬ国をさすらってみたい。

ものすごく大変なことだと思うけど、ものすごく楽しそうだ!

もちろん、

テレビクルーが着いてきてたら、意味がない。



それなのに、オレは、

海外放浪などにはチャレンジしないまま、30歳を過ぎてしまった…。

「なんで放浪にチャレンジしないの?」と尋ねられると、

「いやぁ、音楽活動が忙しくて、

 長期の休暇が取れないよ!」

と、反射的に答えている。



…しかしそれは、「タテマエ」だ。


『ゆずと林檎』

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