top of page

エピソード2 『イエスの子らよ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月3日
  • 読了時間: 2分

「マリアンヌ!起きなさい!

 起きなさい!マリアンヌ!起きなさいったら!」

お母様のどなり声で、私は目を覚ましたわ。

「もう!眠ってはダメとあれほど言ったのに!

 約束違反をするのは、これが最後ですからね!

 これからはもう、てっていてきに素直な良い子で過ごすんですよ!

 修道院に入るんですから。」

「着いたのね。」私は目をこすってつぶやいた。

修道院って知ってる?

私も知らなかったわ。実際に行ってみるまでは。

教会みたいなところよ。

教会は、日曜日にだけ行くでしょう?

でも、修道院は毎日行くところなの。

毎日行くっていうか、毎日、そこで暮らすのよ。



せまぜまとした町の中にいたわ。目の前に城門がある。

「馬車はここまでしか入れません。あとは歩いていきますからね。」

なんだ、まだ着いてないんじゃない。

ダメよ、ふてくされたら。良い子にならなくちゃいけないんだってば。

私は馬車の御者(ぎょしゃ)さんにていねいにおじぎをして、

その間にお母様は、城門の門番に、何か書類を見せていたわ。

「さぁ行きましょう」お母様は、私の目も見ないで言った。

どれくらい歩くのかしら?それすらも教えてくれない。

小言ばっかり言うけど、かんじんなことは何も教えてくれないの。


ゆるやかな坂道と階段が、交互に続いていたわ。

オムレツのいい匂いがしたけど、寄っていってくれたりしないの。

着いたら食べれるって言ったのに!まだ着いてないからかしら。

まぁ、案外あっけなかったわ。10分も歩けば到着。

大きな教会。

入り口に見張りがいたけど、今度は兵士じゃなくて、神父さまみたいな人よ。

きっとここが修道院。修道院は修道者しか入れない場所なのよ。

お母様は、また書類を見せて手続きをすると、

「良い子にするのよ。マリアンヌ。

 神の祝福がありますように。」

十字を切ってそう言って、私のおでこに軽くキスをした。

振り返りもしないで、行ってしまったわ。あっけなく。

私のこと、きらいなんでしょうね、きっと。

しょうがないわ。私、ぜんぜん言うこと聞かない子だったから。



『イエスの子らよ』

最新記事

すべて表示
bottom of page