エピソード2
「うん、行く!」
「オッケー♪
ムカイくん、今日も『路上』だべ?
終わる頃に、駅まで車出すから、
『路上』が終わったら、電話してよ♪
…あと、
どっか、行きたいトコ、考えといてぇ?」
…というワケで、
今日は、「いつも通り」の路上ライブを、
「いつも通りじゃない」ソワソワしたキブンで迎え、そして、終えたんだよ。
…まぁ、
歌ってる最中は、ハルオのことなんて、
サッパリ忘れ果ててたけどさぁ。
…ハルオって?
そう、ヤツのことさ♪
本名は、ヒロユキって言うんだけどさぁ、
水野春夫に似てるから、「ハルオ」って呼ばれてんだ。
中学時代の同級生なんだけど、
友人の少ない僕が、ハタチまで付き合いを続けてた、
数少ない、「地元仲間」ってヤツだろうなぁ。
ヤツは、
旅が好きなんだ。
…いや、訂正!
「突発的な旅」が、好きなんだ。
いつも、
突発的に思いついて、
草津温泉まで日帰りで行ってきたりとか、
富士樹海のそばの洞窟探検してきたりとか、するんだよ。
こないだなんて、
「しばらく音信がナイなぁ…」って思ってたら、
フルヤっていう、別のバカ友を連れて、
遥か福岡まで、2週間もの壮大な期間を費やして、
車でブラブラ、旅してきたって言うんだよ!
その話を聞かされたとき、
僕はモチロン、言ってやったさ!
「なんで、僕も誘ってくれなかったんだ!?」
ってさ!
ヤツの答えは、
「オレの車じゃ、3人も寝泊り出来ねぇよ」
という、
ヤツにしては、いたって、理に適った答えだったよ。
…でさぁ?
遥々福岡まで行った理由、なんだと思う?
一発で当ったら、100万円あげても、イイよ♪
…どう?
何か、考えた?
僕もさぁ、その時ヤツに、尋ねたのさ。
「なんで、福岡だったの?」ってさ。
ヤツの答えは、こうさ。
「ラーメン、食いたかったんだよ!」
僕は、言い終わる前に、電話を切ってやったさ!
「付き合いきれない」っていうのは、
ヤツのような大バカ者のことを、言うのさ!
…とまぁ、
ハルオってのは、そういうヤツなんだよ。
だいたい、解ったろう?
『トトロの森のけもの道』