エピソード33 首長の村の掟 -真実の物語-』
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- 2023年3月11日
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メーホンソン行きの長距離バスは、
チェンマイの長距離バス・ターミナルから、出ている。
メーホンソン行きは、
大きな観光バスと、
小さなライトバンと、2種類あるらしかった。
観光バスのほうが、断然、快適であるらしく、
旅行者はたいてい、バスを選ぶらしかった。
すると、僕は当然、
ライトバンのほうを選んだ(笑)
現地人ばかりが周りに居るほうが、面白いし、
現地人の暮らしが、理解出来る。
僕と同じような価値観を持つ旅人も、
まぁ、2割くらいは、居る。
そして、今回のライトバンには、
その「2割」の中に、日本人の女の子が、含まれていた!
ユミちゃんという、小柄な、19歳の女の子だった。
彼女とは、たくさん喋ったが、
ずいぶんと、たくましく、面白い子だった!
これが、初めての海外だと言う。
まぁ、19歳であれば、それも頷ける。
英語は、特に習ったりしたことは無いが、
学校の授業のウロ覚えで、巧みにやりくりしている。
彼女は愛想が良く、独特の、心地よいイントネーションで、
小気味よい英会話を操っていた。
魂が、英語を知っているのだろう。
(いや、たいてい誰の魂も、英語を知っているが。)
彼女も、
昨日まで、山岳民族のトレッキングに、参戦していたらしい。
体力があるわけではなく、「死ぬかと思った!」と笑っていた。
死ぬかと思える体験を、笑い飛ばせる人が、「旅人」である(笑)
僕は、
「ユミちゃんも、少数民族の暮らしに、興味があるんでしょ?」
と、当然なことのように、尋ねた。
「ん?うーん、ちょっと違うような…
確かに、彼らの暮らしにも、興味はあるんだけど、
私の場合、『民族衣装』に興味があるんだよねー。
私、服飾の学校に進んだの。
色んな服を作れるようになりたいから、
民族衣装を間近で観察したくて、
タイの山奥まで、来てみたんだー!」
「へーーーっ!!」
僕は、偉く感心してしまったし、偉く驚いた。
僕はてっきり、
山岳民族のトレッキングに参加する人たちは、みんな、
「ウルルン滞在○」のようなものに憧れているのだと、思い込んでいた。
けれども、
そうとは限らないのだ!
ユミちゃんのように、その衣服にだけ、興味を示す人も、居る。
あのフランソワのように、山登りの一環として、選んだ人も、居る。
マニアックな、同じ場所に居ても、
同じ動機であるとは、限らないのだ!!
世界には、様々な人がいるのだ!!
そして、
彼女のように、特定の分野を強烈に探求する人間に、敬意を感じる。
…いや、
特定の分野を探求するために、
いつも同じ空間に閉じこもっている人には、敬意は感じない。
興味ある分野のために、
普段とはぜんぜん違うフィールドにも、飛び込んでいくような人間に、
僕は、敬意を感じるのだ!
服飾というのは、超インドアな分野であり、
タイの山岳トレッキングというのは、超アウトドアなフィールドだ(笑)
彼女のように、
一つの確固たる興味を持っていながらも、
且つ、幅広い場所に足を運び、様々なものを謙虚に吸収する人は、
必ず、その道において、革新的な何かをやり遂げるだろう。
無名であっても、何か、やらかしているだろう。
『首長の村の掟 -真実の物語-』